アルコールは何処に行った? 対ウイルスで知っておくべき「アルコール」のこと

消毒用アルコールイメージ

ty.photo / PIXTA(ピクスタ)

アルコールは何処へ行った

エチルアルコールは何処にありや、何処にありや。全世界は知らんと欲す」* 〈*チェスター・ニミッツ提督の発した有名な電文より。戦局の重大なときに確実に存在する筈のもの(ハルゼー提督の空母機動部隊)が、消えてしまった時に発した。”WHERE IS RPT WHERE IS TASK FORCE THIRTY FOUR RR THE WORLD WONDERS(第34任務部隊は何処にありや 何処にありや。全世界は知らんと欲す)”〉  エチルアルコールが市中から消えて既に4か月目になります。エチルアルコールどころか、工業用の変性アルコール*まで消滅しています。それどころか筆者の愛用するコーヒーサイフォンに必須の燃料用アルコール**まで消えつつあり、筆者はとても困っています。幸い、筆者は実験用の95%エチルアルコール(エタノール)を1ガロン(約3.8リットル)備蓄していますので、当座は凌げます。また筆者は、Chemist(化学者)ですので多少の裏技は知っています。(ミスったら死ぬから教えないよ。) 〈*酒税法対策に、エチルアルコール(エタノール)にメチルアルコール(メタノール)や2プロピルアルコール(2プロパノール,イソプロパノールとも呼ぶ)を混ぜて飲用不可としたもの。ものすごく不味いし、場合によれば死にます〉 〈*メタノールに誤飲時の毒性を少しでも緩和するためのエタノールを混ぜたもの。飲んだら死ぬで。失明するで。永久完全失明するで〉  消毒用エタノールなどは、転売屋がものすごいプレミアムを付けて売っているのを見ます。これが品切れの主因と言う主張もありますが、実はエタノールは、工業原料でもあり、81万キロリットルも国内に流通しています(参照:一般社団法人アルコール協会)。医療用のエタノールは製薬用を含めて総量で4万2千キロリットルですので、たかだか5%にすぎません。しかもこれは製薬用も含みますので、消毒用アルコールの需要増といってもシミのようなものです。  参考までにエタノールの輸入価格は2018年で66円/リットルです(参照:アルコール協会)。  エタノールの市中からの払拭には、エタノールそのものの需給の他に理由があります。この連載では、2回にわたってそれを明らかにしてゆきます。

コロナウィルス退治とアルコール

 SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)問題が生じてすぐのころ、概ね2月上旬まで、「石鹸は、(新型コロナに)効果が無い」だの、「アルコールは、(新型コロナに)無意味」だのといった流言飛語が飛び交いました。  こういう場合は、まず厚生労働省(厚労省)の公式見解を見るのが正しいです。” 厚労省 新型コロナ 消毒”で検索すると文書*が出てきます。 〈*新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項(日本環境感染学会とりまとめ)厚労省〉 ”6.取っ手、ドアノブなどの共用する部分を消毒する タオル、衣類、食器、箸・スプーンなどは、通常の洗濯や洗浄を行います。感染者のものを分けて洗う必要はありません。 ただし、洗浄前のものを共用しないでください。 ウイルスは物についてもしばらく生存しているため、ドアの取っ手やノブ、ベッド柵ウイルスがついている可能性はあります。0.05%の次亜塩素酸ナトリウム(薄めた漂白剤)で拭いた後、水拭きするか、アルコールで拭きましょう。トイレや洗面所の清掃をこまめに行いましょう。清掃は、市販の家庭用洗剤を使用し、すすいだ後に、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用消毒剤を使用します。”(筆者抜粋)  ここででてくるものは、石鹸、洗剤と言った界面活性剤、そして次亜塩素酸ナトリウム(参照:”「漂白剤がコロナに効く」デマは死に至る危険性も。内服薬以外の化学薬品は飲むな食べるな混ぜるな””トランプ大統領が世界を震撼させた「漂白剤(家庭用消毒薬)を注射」発言はどれだけ危険か?”)、アルコールの三種類です。この中で石鹸とアルコールが効く理由は、コロナウィルスの特徴にあります。  コロナウィルスは、エンベロープウィルスの一種で、脂質の膜に覆われています。そのエンベロープ(包み)にスパイクタンパク質が生えており、トゲトゲに見えます。このスパイクタンパク質が宿主の細胞に入り込むために必須のものです。そしてエンベロープの膜は寄生された宿主の組織から作られています。このエンベロープの中に遺伝子(コロナウィルスの場合RNA)が入っており、このRNAを宿主の細胞に注入することで増殖することができます。ウィルスは、生物の根本条件である増殖を自身でできないという点で生物ではないという考えがあります。筆者はその考えをとっています。  このエンベロープは脂質でできていますので、界面活性剤(石鹸)やアルコールで極めて容易に溶けてしまいます。エンベロープが破壊されるとそのウィルスは、スパイクタンパク質も失うことで感染力を失い、破壊されます。  次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター類)の場合、100倍に水で薄めたものでコロナウィルスを「ノックアウト」*できることが知られていますが、これはその強力な酸化力によっています。また、キッチンハイターの場合、界面活性剤が入っていますので濃度によってはエンベロープを溶かす効果も副次的に期待できます。 〈* Byドナルド・トランプ合衆国大統領。筆者はこの表現をとても気に入っている〉  アルコールや石鹸と、次亜塩素酸ナトリウムではコロナウィルスを破壊する仕組みに違いがあるといえます。  いずれにせよ、くれぐれも石鹸や消毒用アルコールやハイターを飲んだり食べたり注射しないでください。下手すると死にますし、失明もあり得ます。そうでなくても気分が悪くなって自分が「ノックアウト」されます。  ここまで、よりよく知りたい方は、ヨシダ製薬による解説*をお勧めします。 〈*Y’s Square:病院感染、院内感染対策学術情報 ヨシダ製薬 2)その他のウイルス
次のページ
メタノール、エタノールの違いを復習する
1
2
3
PC_middleRec_left
PC_middleRec_right
関連記事
PC_fotterRec_left
PC_foterRec_right