¦æ–°ã—いもので、医療や発酵の分野へこの概念と技術が本格的に取り入られたのは19世紀半ばであり、まだ200年経過していません。むしろ食品産業において「瓶詰」という形で40年近く先行して経験的に導入されています。  また物理的消毒として器具を煮沸する、器具を焼くという消毒法が経験的に普及したのも19世紀です。それまでは、手術に成功しても感染症で患者が死んでしまう確率が極めて高かったとされます。  化学的消毒法の普及もやはり19世紀であり、パスツールとコッホによる微生物の発見、病原菌の発見によって裏付けられています。手洗い*は、化学的消毒の一種です。 〈*手洗い 厚生労働省〉
コロナウイルスの外観と断面図

コロナウイルスの外観と断面図(ウイルス自体に色はない)
image via scientificanimations.com(CC BY-SA 4.0)

 コロナウィルスは、エンベロープウィルスの一種で、脂質の膜に覆われています。そのエンベロープ(包み)にスパイクタンパク質が生えており、トゲトゲに見えます。このスパイクタンパク質は、エンベロープウィルスが宿主の細胞に入り込むために必須のものです。エンベロープの膜は寄生された宿主の組織から作られています。このエンベロープの中に遺伝子(コロナウィルスの場合RNA)が入っており、このRNAを宿主の細胞に注入することで宿主に寄生し、増殖することができます。ウィルスは、生物の根本条件である増殖を自身でできないという点で、生物ではないという考えがあり、筆者はその考えをとっています。  このエンベロープは脂質でできていますので、界面活性剤(石鹸)やアルコールで極めて容易に溶けてしまいます。エンベロープが破壊されるとそのウィルスは、スパイクタンパク質も失うことで感染力を失い、最終的に破壊されます。  RNAの包みを剥いでしまえば感染しないと言うことは極めて重要で、日本を除く殆どの国で膨大に行われて、大成果と勝利をもたらしつつあるPCR (ポリメラーゼ連鎖反応) 検査の検体が安全に輸送・取り扱できる理由がここにあります*。面倒くさいことを考えずとも、コロナウィルスは、石鹸か高濃度のエタノールでエンベロープを溶かし、スパイクタンパク質も除去してしまえば感染能力を失う為、化学的消毒の効果はバツグンなのです。 〈*新型コロナウィルスのPCR検査にはBSL3(Bio Safty Level)ないしBSL4の施設が必須であるという言説がまことしやかに流れたが、これらは嘘である。現実にはBSL2の施設がBSL-3相当の手順で使われる。参照:WHOの国際的SARSリファレンスおよび確認研究施設ネットワーク:流行間期における政策と手法(抄訳) WHO 2004/01/23国立感染症研究所 感染症情報センター〉  石鹸は普通の家庭用石鹸で全く問題なく、アルコールは濃度60%以上のエタノール*であれば問題ないとされています。 〈*50%以上の濃度のエタノールでも十分な消毒能力を持つという報告があるが、揮発による濃度低下などへの安全余裕を持たせるために、厚労省の指示通りアルコール濃度60%以上という見解を筆者はとっている。参照:医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)不活化効果について2020/04/17北里大学〉  国内に年間81万キロリットル流通しており質、量、価格全てにおいて極めて入手が容易な筈のエタノールが通常通り入手できれば、我々市民がコロナウィルスと闘うにはとても心強い武器となるのですが、前回、前々回に記述しましたとおり、全く本質からかけ離れた理由で高濃度アルコールは入手困難となっています。筆者のもとには、医療関係の読者から「まだ手に入りにくくてとても困っている」という悲鳴とも言える読後感想が届いています。内閣と与党は、何をしているのでしょうか。まさか不要不急の法案でドタバタやっていたり議場でワニや小説を見ているのではと悲しくなります。  また、無敵の対コロナウィルス最終兵器と思えるアルコールにも思わぬ弱点があります。水回りでは、「効果はいまひとつだ」となってしまうのです。理由は簡単で、アルコールが水で流れる、水で薄まってしまうのです。  しかし心配ご無用。心強い味方があります。次亜塩素酸ナトリウム=キッチンハイターです。次亜塩素酸ナトリウムは、食品工業で使われており、医療現場でも極めて有力な消毒剤として使われています。  但し、次亜塩素酸ナトリウムNaClOは、強塩基性(強アルカリ性)であるため人体、とくに皮膚に有害であるだけでなくアルカリと塩素がいろいろなものを腐食させます。とくに皮膚や粘膜、そして金属は強く侵される*ために入念に拭きとる必要があります。 〈*輝かなくなったコインをピカピカにするには、薄めたハイターにコインを浸けると良い。長時間浸けるとコインが侵されるので、ピカピカになったら取り出して水で十分に洗うと良い。但し必ず予備実験をすること、金属によってはむしろ酷いことになる場合がある〉  次亜塩素酸ナトリウムについては、何をしたら危険かについては、過去の記事に詳細に記述していますのでそちら(参照1、2)をお読みください。医療用の薬を含め化学薬品は、我々人類の生活を清潔且つ快適で豊かにしますが、使い方を誤れば簡単に人の命を奪います。  次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター)は、強アルカリ性であるために人体には使えません。一方で、エタノールは、政府における縄張りや規制の調整が遅れており、コロナ禍が始まって5ヶ月目に入った今も入手性に重大な問題を抱えています。  その為、市民にとって外出時など手洗いが難しい時に手指や触るものを消毒する手段に困ることがあります。  日本では、アルカリ電解水の副産物としての次亜塩素酸水が使われることがあり、これは弱酸性であるために皮膚についても炎症などを起こしにくいです。むしろアルカリイオン整水器メーカーによって「アストリンゼント水」として化粧水などに推奨されることもあります。  次亜塩素酸水には、当然ですが次亜塩素酸HClOが含まれており、コロナウィルス対策に期待され、実際に愛用する人も見かけます。次亜塩素酸ナトリウムも次亜塩素酸も酸化剤である次亜塩素酸イオンClO-の強い酸化力がコロナウィルスの遺伝子(RNA)をエンベロープごと破壊することが期待されており、化学者から見れば似たものです。  但し次亜塩素酸については、本当にエンベロープウィルスを破壊するのか、破壊するのならばどの程度の濃度が必要かについてまともな情報が市中にありません。結果、メーカーのカタログのみが一人歩きしており筆者は非常に不味いことだと深く憂慮しています。  この記事では、エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸の三つの代表的な家庭向け消毒剤について解説を行います。なお本稿では、原則として厚労省の資料を軸に解説しますのでかなり保守的なものとなります。理由は簡単で、効果の薄い消毒は、感染症防御に大穴を開けることになり大勢の命に関わるほどに危険であるからです。
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消毒用アルコールの効果と注意点
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この連載の前回記事

なぜアルコールが足りないのか? アルコール危機の陰に垣間見える経産省の深刻な不作為

2020.05.10
コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」の一覧へ
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