薬機法を回避するために新たに定義された高濃度エタノール製品を含め高濃度アルコールは、コロナウィルスを含むエンベロープウィルスを強力に破壊します。
しかし安価に入手可能なメチルアルコール(メタノール)やメタノールを含む燃料用アルコール、一部の変性アルコールについては、メタノールが人間を含む霊長類に対して失明や死亡を引き起こす強い毒性を持つために消毒に用いることはたいへんに危険です。
消毒用には、エタノール(炭素原子二つのアルコール)かプロピルアルコール(プロパノール、炭素原子三つ)が有効且つ安全です。従って消毒薬としては、1リットルあたり1000円の酒税または経産省による酒税相当加算額を回避するためにエタノールへ1-プロパノールと2-プロパノールを僅かに混合したものが供給されています。本連載では便宜的に消毒用エタノールと呼称します。
エタノールの構造式
Image via Wikimedia Commons(Public Domain)
アルコール全般は、可燃物であり濃度60%以上の高濃度エタノールは、たいへんに燃えやすいものです。火に向けてスプレイすれば、炎が上がりとても危険です。実は筆者は、最近この失敗をしてしまいました。とろ火のガスコンロが消えていると思い込み、スプレイしてしまったのです。
エタノールは自動車の燃料として使われるほどに燃えやすく完全燃焼すると炎がとても見えにくいので火に気がつかないこともあり得ます。インディーカーレースでは、エタノール燃料(エタノール85%ガソリン15%)が使われており、ピットで給油中の事故で燃え上がってもTV画面では炎が見えず、火のついた燃料を被ったピットクルーが突然踊りはじめたように見えたことがあります。筆者は、勝利の踊りとは気合が入ってるな!と感心したのですが、解説者が「危険です。火がついています。アルコール燃料の炎は見えにくいのです」と言っていました。
一方で火気に気をつけている限り高濃度エタノールはたいへんに使いやすいものです。濃度90%を超えるエタノールやプロパノールは、極めて強い脱水作用があるためにその効果も期待されますが厚労省は、消毒薬として最も効果のあるエタノールの濃度範囲は
60-80%程度の範囲としています。従って筆者も消毒用アルコールとしてはその範囲を推奨します。消毒用アルコールは体温で自然蒸発しますので、かけた後は放置で構いません。
筆者は、外出時にはアルコールスプレイを常に持ち歩き、接触するあらゆるものを消毒しますし、手指も消毒します。但しアルコール自体は中毒性がありますので、顔にかけることはやめましょう。顔が気になるときは、洗面所で顔を洗ってください。筆者は、交差汚染を防ぐためにアルコールによる噴霧、洗浄後は拭わないか、キッチンペーパーで拭くようにしています。傍目には、スプレイとキッチンペーパーを持ち歩く長髪のおじさんが手当たり次第にシュッシュする様は、かなり奇妙ですが仕方ありません。
高濃度エタノールは、ドアノブなどを消毒することにも向いており、十分にかけた上でキッチンペーパーなどで拭き取ればよいです。濃度50%以上のエタノールと一分間接触すればコロナウィルスは100%破壊できるとされています。一方で30%などの低濃度では、効果が無いとされています。従って焼酎やウイスキー程度では消毒効果がないか、不足しています。まさに「効果はないようだ」「効果はいまひとつだ」です。
また、くれぐれも火災とアルコール中毒に注意して消毒用アルコールを活用してください。コロナ禍の中での生活がとても楽になります。
さて、コロナウィルスを溶かして破壊するアルコールですが、アルコールは水回りではあまり効果を発揮できません。また現在は、入手性に大きな問題がありますし価格もそう安くはありません。筆者は、一回の外出で150ミリリットル以上のアルコールを使ってしまいますので備蓄が無ければかなり高コストとなり、現状は在庫の安定性にも欠けます。
次回は、留意点は多々ありますが、極めて低コストで入手性に問題が無い次亜塩素酸類について解説します。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ7
<文/牧田寛>