オウム事件の「風化」に言及しても「風化」の実情は報じない新聞・テレビ

現状はすでに「風化」をはるかに超えている

 「風化」とは「ある出来事の生々しい記憶や印象が年月を経るに従い次第に薄れていくこと」(大辞林)。オウム真理教の問題や事件について、多くの人が忘れてしまい語られる機会が減る。それが「風化」だ。  新聞やテレビは、オウム問題で大きな動きがあれば報じるし、例年、地下鉄サリン事件の近辺や当日には関連報道を行なっている。十分かどうかはともかくとして、新聞・テレビは彼らなりに「風化」に抗ってはいる。  問題は、「風化」の具体的な内容が深く追求されていない点だ。  私の目から見て、オウム真理教をめぐる話題はすでに「風化」しすぎて、デマすらもほとんど批判されずに堂々と公の場で語られるような状況になっている。人々が忘れて語らなくなっているだけではない。それをいいことに、事情に詳しいかのような態度で事実に反したニセの歴史を公の場で語る人々や、オウム残党の活動に加担する人々がいるのだ。

被害者団体を中傷する麻原三女

 2018年6月。教組・麻原彰晃の死刑が執行される約1カ月前。麻原の死刑執行に反対し「病気の治療」を主張していた三女「アーチャリー」こと松本麗華氏が、都議会議員・音喜多駿氏(現・参議院議員)らが主宰するサロンで講演した。(参照:音喜多駿都議らのイベントで麻原三女がオウム被害者団体を中傷|やや日刊カルト新聞) 「(被害者の会は)“子供を返せ”って言っているんですが、その子供というのは大人です。はたち過ぎた大人のことを“子供返せ”と言っている活動。子供もいたんですが、そういう活動なんです」(講演での麗華氏の発言)  実際には、被害者の会は未成年者の出家問題が会結成の発端だった。未成年の子供が出家し、親が「子供に会わせろ」と教団施設に足を運んでは新実智光元死刑囚など対応に出た信者に追い返される。その中で親たちが互いに連絡を取り、1989年に結成したのが「オウム真理教被害者の会」(現・同家族の会)だ。  同会の設立に尽力した坂本堤弁護士も、未成年で出家した子供を取り戻したいという親からの相談を受け、オウム側と交渉していた。「被害者の会」設立時から現在も「家族の会」の会長を務める永岡弘行氏も、活動を始めたきっかけは自身の息子が未成年で出家したことだった。  麗華氏の発言は、事実に反して当時の「被害者の会」関係者たちを貶めるものだ。
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「風化」が生み出す弊害
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