約900mの地点から撮影した操業再開直後の伊方発電所夜景2018/08/13撮影 牧田寛
去る2020年2月19日午前、四国電力は、伊方発電所3号炉運転差止仮処分決定に対する保全異議申立てと、仮処分執行停止の申し立てを行いました。〈参照:”
四国電、伊方原発差し止めに異議 トラブル究明さなか”2020/02/19日本経済新聞、”
伊方差し止め異議申し立て 再稼働阻む「三つの壁」2020/02/20愛媛新聞”〉
筆者は、高知県の脱原発系メーリングリストの配信を受けていますが、みなさん「あんな事故連続して許せない!」と激おこです。原子炉好き好きマンの筆者はけっこう圧倒されてしまいました。
今回は短めになりますが、
四国電力による山口ルート*伊方発電所3号炉運転差止仮処分決定に対する保全異議申立てと、仮処分執行停止の申し立てについてご紹介します。
〈*筆者は、愛媛県、大分県、山口県、広島県で行われている運転差し止め訴訟、仮処分審を愛媛ルート等と呼称している〉
過去3回に分けてご紹介(
1,
2,
3)した様に、伊方発電所3号炉運転差し止め仮処分申し立て、山口ルート即時抗告審において、
2020年1月17日、広島高等裁判所は、本訴判決申し渡しまでを期限として伊方発電所3号炉の運転を差し止めるという決定を行いました。この決定は、筆者にとっては青天の霹靂と言うほどに意外なもので、仮処分審においてある程度の感触を掴んでいた四国電力にとっても虚を突かれる厳しい決定であったと思われます*。通常は、四国電力側は直ちに保全異議申し立てを行い、できるだけ早くこの差し止めをひっくり返しに取りかかります。
〈*
広島高等裁判所での抗告審における伊方発電所3号機運転差止仮処分の決定について2020年1月17日 四国電力株式会社〉
その後、
第15回定期点検(定検)中に連続して重大インシデント、重要インシデントを生じさせたことから、四国電力は、保全異議申し立てをしばらく見送る旨コメントしていました*。これは合理的なことで、今、保全異議申し立てを急いでも保全異議申し立て審の決定は、早くて年末です。2021年3月からは特定重大事故等対処施設(特重施設)の完成猶予期限切れで1年ないし2年間の運転停止が避けられない情勢です。長くても2ヶ月半程度しか運転できないなら、原子炉は休止したまま特重施設工事に集中して運転停止期間を短縮した方が遙かにましです。
〈*
四国電、不服申し立てを見送り トラブル続き社長が知事に謝罪2020/01/27 共同通信〉
以前も触れました様に、山口ルート差し止め仮処分即時抗告審における伊方3号炉運転差し止め決定は、原子炉運転事業者にとっては、よりにもよって最悪の時期に申し渡されたものです。例えるならば、ボクシングのエキジビジョンマッチで世界チャンプがランキング外にラッキーパンチ喰らってダウン一つとられた様なものです。まさに「つうこんのいちげき」です。
しかし筆者が想像するに、8電力からの突き上げや、政府からの圧力、株主総会への準備、弁護士や法務の見解などいろいろな要因があったと思われますが、
四国電力はすぐに保全異議申し立てを早々に行う旨態度を変えました。筆者は、どうせ3年くらい時間があるので広島高裁決定での争点について徹底して対策して、来年半ば頃に保全異議申し立てするのも手だと考えていましたが、電力会社には電力会社で事情があるので仕方ないのでしょう。
例えるならばチャンプといえどもダウンしたらカウント9まで体力回復して、それから「かいしんのいちげき」で、ルーキーを伸してしまうのかと思っていましたが、2カウントで立ち上がったということです。