青天の霹靂だった伊方原発3号炉差し止め仮処分決定。予想される影響は?

伊方原発3号機の運転差し止めを命じる仮処分決定

伊方原発3号機の運転差し止めを命じる仮処分決定を受け、「勝訴」の垂れ幕を掲げる原告ら=17日、広島高裁前(写真/時事通信社)

伊方原子力発電所3号炉運転差し止めの仮処分が決定

 去る1月17日広島高等裁判所にて伊方原子力発電所3号炉運転差し止めの仮処分が決定しました*。 〈*四国電伊方原発の運転差し止め仮処分を決定-株価は8%超下落, 2020年1月17日 14:10 JST, Bloomberg〉  伊方発電所3号炉は、仮処分決定によって即日運転ができなくなりました。差し止め期間は、現在山口地方裁判所岩国支部で係争中の本訴判決が出るまでとなります。  筆者は、最近の原子力発電所関連の司法判断が福島核災害前のヒラメ判事*大発生に戻っているためにすっかり関心を無くしていたので、この決定にはたいへんに驚きました。四国電力もまさか差し止め判断が出るとは思っていなかったのではないでしょうか。 〈*ヒラメ◎◎:裁判官の人事を握る最高裁事務総局や政権、財界の顔色ばかり伺って合理性のない無茶な判決や決定を出す判事をヒラメ判事と呼ぶ。由来は、ヒラメの目が2つとも上向きで「上しか見えない」というところから。司法の独立性が脅かされている日本で大量発生し、司法の公正さを著しく損ねているとされる。「ヒラメ◎◎」は、上役の顔色ばかり窺う者を示す言葉としてよく使われる応用範囲の広い言い回しである。ヒラメ教員、ヒラメ社員など〉  今高裁決定は、筆者にとって腰痛で寝込んでいるのに飛び起きてしまうほどに青天の霹靂とも言えるものでした。  今回から数回にかけてこの伊方発電所3号炉運転差し止め決定についてその位置づけや影響、今後について解説します。
東側から撮影した伊方発電所空撮写真

東側から撮影した伊方発電所空撮写真 2016/12/25撮影 めたぼ
この年の8月に3号炉が操業再開しているが、特重工事は本格化していない。
(写真提供/秋田放射能測定室「べぐれでねが」のめたぼ氏)

差し止め決定の概要

 今回運転差し止め判断がなされた伊方発電所運転差し止め仮処分申立は、山口県において2017年12月27日に提訴された伊方発電所運転差し止め本訴(山口地方裁判所岩国支部)にかかわるものです。本訴の原告は、伊方原発を止める山口裁判の会で、被告は四国電力となっています。仮処分申し立ては、山口県側の瀬戸内海島嶼部在住の3人によるもので債務者が四国電力です。  仮処分請求は、本訴結審までに原告の利益が脅かされる場合に認められるもので、効力は本訴判決までです。一方で、仮処分に当たっては原告側に被告の損失に対する担保の提出が求められることがあり、また仮処分が認められた後本訴で棄却が確定した場合、損害賠償を請求される可能性があります。  伊方発電所運転差し止め仮処分は、2017年3月3日に山口地裁岩国支部に申し立てられましたが、2019年3月15日に却下され、原告側即時抗告により広島高裁にて争われていました。  去る2020年1月17日に原告の主張を認め伊方発電所3号炉の運転差し止め決定がなされましたが、四国電力は「極めて遺憾で、到底承服できるものではない」とし、速やかに不服申し立ての手続きを行う方針です。  今回の仮処分決定の要旨主文は次のようになります。(括弧)内は、筆者注。 1 原決定(山口地裁岩国支部による却下)を取り消す。 2 相手方は,本案訴訟の第一審判決の言渡しまで,愛媛県西宇和郡伊方町 九町字(くちょうあざ)コチワキ3番耕地4 0番地3において,伊方発電所3号機の原子炉を運転してはならない。  これによって伊方発電所3号炉運転は、運転が差し止められました。決定は即日効力を持ちますが、伊方発電所は2019年12月26日より第15回定期検査(定検)のために運転を停止中*ですので定検終了予定の2020年4月27日までに決定が翻らなければ新たな決定が出るまで原子炉の運転はできません。 〈*伊方発電所3号機 第15回定期検査の実施について2019/12/12四国電力〉  また、決定理由要旨の最後にこのようにあります。 ”5 保全の必要性及び担保の要否 (2)本件は,証拠調べの手続に制約のある仮処分手続であるから,相手方に運転停止を命じる期間を,本案訴訟の第一審判決の言渡しまでと定めるのが相当である。 (3)本件においては,事案の性質に鑑み,担保を付さないこととする。”  従って本仮処分決定の効力は、本訴第一審判決申し渡しまでとなります。また、原告側は担保を提出する必要はありません。この担保提出不要の決定は重要で、すでに十分な判例が蓄積しつつあるといえます。仮に本訴棄却決定した場合には、四国電力が損失に対する損害賠償請求をしたとしても、1日停止あたりの送電端価格売り上げ減約3〜4億円(年間約1000〜1500億円)であり、差し止め請求原告団からは提訴時に要する収入印紙代すら回収できませんので全く無意味です*。 〈*政府や電力によるプロパガンダと異なり、現実の発電原価で比較すると原子力発電の発電原価は、石炭・ガス火力発電に比してきわめて高価となるため、電力会社にとり深刻なやぶ蛇訴訟となりかねない〉  今回決定を含め前回の広島地裁仮処分決定(広島差し止め訴訟)、高浜発電所運転差し止め仮処分決定(大津地裁)などで同様の決定が積み重なっていますので、原子力発電所などの産業施設運転差し止め請求のハードルが大きく下がるものと思われます。
次のページ 
差し止め仮処分決定の影響は?
1
2
PC_middleRec_left
PC_middleRec_right
関連記事
PC_fotterRec_left
PC_foterRec_right