四国電力は、山口ルート広島高裁差し止め決定について保全異議申し立てを行いました。四国電力社長会見にある様に、差し止め決定の既成事実化を避けるために保全異議申し立ての事実を作るという考え方は社会通念としてはあり得ます。
”
ただちに効力が発生する仮処分案件で異議申立ての時期が遅れ、当社の意思が法律手続きの俎上に載らないままでは、
・発電所の敷地から2km以内の佐田岬半島沿岸部に活断層が存在しないとはいえないなどとする、明らかに事実とは異なる広島高裁の認定内容を放置することとなり、地域の皆さまの不安につながること
・当社がこれまで主張してきた伊方発電所の安全性や必要性について、裁判所に誤ったメッセージを伝えかねないこと
などから、本日、当社は異議申立てを行い、このたびの司法判断に対し、法廷の場において主張すべきことを主張していくこととしたものであります。”(
四国電力社長会見要旨より)
しかし、現在2県で進行中の差し止め仮処分、4県で進行中の差し止め本訴が将来、四国電力の意図通りの結論を出すとは限りません。また仮に今回の司法リスクを乗り越えたとしても、そのときに経済的に原子力発電が成立しているか否かは、たいへんに危ういものがあります。合衆国の電力会社が日本の原子力発電所についてその経済的将来性を判断すれば、殆どの原子炉が直ちに廃止されてしまうであろう現実が眼前にあります。
筆者は、電力会社の将来をかけるには余りにもリスクが高くなってしまった原子力発電に莫大な投資と司法対策への資源配分をすることが妥当であるかに強い疑問があります。過大なコストカット圧力が生じれば、原子力発電は安全を維持でできなくなります。それが沸騰水型原子炉(BWR)陣営が陥り福島核災害に至った悲劇の歴史です。
国策のドグマ(教義)は、原子力推進ですが経産省が石炭政策で見せた大失政とその後の逃げ足の速さと徹底した無責任、見捨てられた石炭業界、労働者、産炭地の悲惨な歴史と行政災害と言うほかない北炭夕張新炭鉱ガス突出事故*を考えると原子力国策も全く当てになりません。
〈*
北炭夕張炭鉱で事故 犠牲者93人 NHK名作選、
北炭夕張炭鉱の事故と閉山 日本石炭産業に致命的打撃2018年7月松本克夫 日本記者クラブ〉
埋め立て中の柿が谷と伊方発電所2019/06/11撮影 牧田寛
手前の重機が停まっている場所は深い谷であった。奥に見えるのは左から2号炉、3号炉、1号炉。ベージュ色の三角の建物は1号炉運開記念塔。シビア・アクシデント(SA)対策資材置き場があるが、3号炉排気口とほぼ同水準にある。ベントを要するときにはすでに運び出しているという前提だろう
埋め立て前の同地点2015/11/01撮影 牧田寛
◆伊方発電所3号炉運転差止仮処分決定に対する保全異議申立てについて(1)
<文/牧田寛>