日本は、戦後検閲と言論統制がなくなりましたが、その中で最大の恩恵を受けているのが地図です。小泉政権時代に一時、テロ対策で地形図に送電線を載せないなどといった事実上の検閲が行われましたが、今ではそれも撤廃され、だれでも何処でも手頃な値段で地形図が購入できますし、Webでは無償公開されています。
そして、地図を読む(読図)教育は、小学校から始まっており、中学生ならば、等高線を読むことも出来るように教育されています。
実は国土全体の詳細な地図が公開されている国は意外と少なく、国土地理院地形図のような優秀な地図をいつでもだれでも何処ででも無償か手頃な値段で閲覧、入手できるのは日本が高らかに誇り得る点です。
かつて旧ソ連邦では、赤軍兵士、下士官は故意に読図教育がなされず、読図が出来るのは士官以上でした*。これは逃亡や反乱を抑止するためとのことです。
<*V.スヴォーロフ『ザ・ソ連軍(正)(続)』原書房1983年ほか>
当然ですが防衛官僚が読図できないなどあってはならないことです。そしてある地点からの見かけ上の最大仰角を知りたければ、距離と高度が分かれば良いだけです*。
<*正確には、地球は球体なのである程度離れると水平線に隠れてしまう。20km以遠だとその効果が現れてくるが、今回は無関係。>
秋田国家石油備蓄基地の場合、男山山頂まで9km、男山は標高715mですのであとは作図して角度を分度器で測れば終わりです。ここまでなら中学生でも出来ます。
すこし高級な逆関数を使うにしても関数電卓があればおしまいです。ここでは、カシオ計算機が公開している
Ke!sanというサイトの中で直角三角形の要素を算出するものを使ってみましょう。
距離9000m、高さ715mの直角三角形の場合、仰角は4.5°となります。ここで高さを4倍にした数値(2860m)を入れると17.6°になります。
ここまででイージス・アショア適地調査において問題となった誤った報告と結論の原因は、
中学生にでもできる初歩的な図面調査すら誤っていたことといえます。そして誤りを発見するためのチェック、ダブルチェックを全く怠っていたと言うことが挙げられます
もちろん買うものが千円程度のプラモデルならば笑って済まされることです。しかし買うものは
一基あたり数千億円とも5千億円とも、それ以上するとも予想されるものです。なんと第二世代の大型商用原子炉の建設費より高いのです。そのような買い物をする際に、事前実地調査すらしておらず、それどころか中学生にも出来る読図調査すら外国製のブラックボックスに任せて怠っていたわけですから、全くあり得ないことです。
地形図は一枚427円で、それを読めばおおかた済む話です。
これは明らかに、
秋田市新屋以外の候補地を恣意的に振り落とすために行ったと考えるほかありません。秋田市新屋は、
北朝鮮、中国からのハワイ向けICBMの迎撃、探知・追跡に最適の場所であり、ウラジオストックなどのロシアの極東部を監視するには最適の場所です。また外国防衛専用の基地のために秋田国家石油備蓄基地を潰すなど経産省が許さないでしょう。経産省は防衛省より圧倒的に格上で、しかも安倍政権は経産省と財務省の支持でなり立っている政権ですから、この二大省庁の利益が最大となります。
沖縄でもそうですが、
いい加減な調査をして適当な報告と虚偽の説明で事業を進め、既成事実化を図り、どんなに大きな問題が起きても既成事実と国防(実際には合衆国の利益)を盾に事業を推し進め巨大なツケを残す。
これは、とてもまともな国家機関ではありません。安倍自公政権9年足らず、日本は墜ちるところまで堕ちてしまっています。
秋田では、それが露見し、一時躓きましたが、事が合衆国防衛と合衆国軍産複合体のお金儲けのための
安倍社交からの貢ぎ物です。秋田県の市民が気を緩めれば、
日本の防衛には何の役にも立たない先制核攻撃の的が秋田県庁から2500mの距離(50ktの核の場合、ほぼ致死)に建設されるでしょう。
さて、ここまで3回にわたって秋田イージス・アショア計画の問題点を指摘してきました。一方、今年に入って
北朝鮮(D.P.R.K.)は、短距離弾道弾(SRBM)の試射を繰り返しています。
このSRBMは、射程から考えて日本にはあまり関係ないと思われがちですが、これは旧ソ連からロシアに続いて開発されてきた、きわめて優秀な最新鋭ミサイルで、試射そのものが日本に影響を及ぼすことはありませんが、その存在は
日本の弾道弾防衛システムを無効化する可能性のあるたいへんにやっかいなものです。
実のところ、このミサイルが配備されれば
萩配備イージスアショアは事実上無力化されると考えて良いでしょう。このことを次回から数回に分けて論じてゆこうと思います。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』ミサイル防衛とイージス・アショア11