「表現の自由」が憲法で保障されなくなったら?<あべこべ憲法カルタ・第2回>

ようこそ、あべこべ憲法の世界へ

 WEBメディア「チャリツモ」では、現在「あべこべ憲法カルタ」を制作中だ。「あべこべ憲法カルタ」は、現行の憲法とは”あべこべ”な憲法が制定された世界を描いている。読者の皆さんには、この”あべこべ”な世界を通して、現行憲法への理解を深めてほしいと思う。  今回ご紹介するのは「な」の札だ。この札では「表現の自由」について書かれた日本国憲法第21条について伝えている。

【な】何してる! 反政府デモは 鎮圧だ!

 カルタの絵札と読み札は、あくまで日本国憲法とあべこべの世界を表している。この札で描くのは「表現」が規制され、政府に批判する言動が圧殺される世界だ。もちろん現実世界の日本国憲法では、「表現の自由」が保障され公共の福祉に反しない限り、反政府デモであっても行うことができる。 【日本国憲法第21条】 1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。  本連載では、さらに深掘りして改憲に突き進む与党・自民党が2012年に発表した「自民党改憲草案」を分析・検証していく。  「表現の自由」を定めた憲法21条。自民党改憲草案でどのような改変がなされているのだろう。ズバリ、注目すべきは新設された2項だ。この新設された2項を、一言で表現すると「クソ」だ。  日本国憲法下では、自民党改憲草案第21条2項を「クソ」と呼ぶ自由と、自民党改憲草案第21条2項が如何に「クソ」かを解説する自由が認められている。改憲されたら権力者を「クソ」と表現する自由が失われるもしれないので、今ある自由を噛み締めながら解説していく。

『公共の福祉』に取って変わった『公益及び公の秩序』から透けて見える政府の思惑とは?

 日本国憲法と自民党改憲草案の大きな違いは、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」と書かれた項が新設された点だ。 【日本国憲法第21条】  1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 【自民党改憲草案第21条】 1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。 2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。 3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。  特に注目すべきは「公益及び公の秩序」という文言である。「公益及び公の秩序」という文言は、日本国憲法の「公共の福祉」という文言の代わりに使われ、自民党改憲草案に4度登場する。 第12条(国民の責務)、第13条(人としての尊重等)、第21条(表現の自由)、第29条(財産権)だ。  自民党改憲草案、そして「公益及び公の秩序」の危険性を理解するためには、まず日本国憲法の「公共の福祉」の意味とその役割を理解する必要がある。
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そもそも日本国憲法の『公共の福祉』とは?
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