急成長するアフリカの覇権を巡り、しのぎを削る中露。経済支援・ネット世論操作でも

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Image by SmallmanA via Pixabay

急成長とともに重要度が増すアフリカ

 アフリカは多様な民族と宗教にあふれており、海外からの干渉も多い。そのため搾取や紛争などが絶えなかったが、近年じょじょに落ち着き、急速な経済発展をとげている。農産物、天然資源などの宝庫として世界から注目を浴び、さまざまな国が進出している。人口も増加しており、市場としての潜在力も大きい。  日本は国際連合、国際連合開発計画、アフリカ連合委員会、世界銀行とともにアフリカ開発会議(TICAD)を主催し、アフリカ開発で主導的な役割を果たしている、と言いたいところだが、TICADの主催国であるにもかかわらず、アフリカにおける日本の存在感はあまりない。  アフリカに日本人がいるとよく現地人に中国人と勘違いされる。それくらい中国は進出しており、中国語の新聞が発行されている地域もある。それ以外のアジアの国、たとえば韓国もアフリカに進出している。後述するように北朝鮮は金日成の時代からアフリカを支援している。  もちろん、日本の援助でうまくいっている分野もある。コメである。日本のコメとは種類が異なるが、アフリカは以前からコメの消費量が多かったが、自給率は低かった。この問題を解決するために作られたのが、「アフリカの稲作振興のための共同体(CARD)」だ。2008年の第4回TICADを機に発足し、「コメ生産量10年間で倍増」を目標に活動し達成した(参照:『アフリカ・サブサハラで「コメ生産量10年間で倍増」の目標達成へ』JICA、2018年9月28日)。ただし、中国や韓国も同様にコメでアフリカにアプローチしている。  遠くない将来、アフリカが世界経済において重要なポジションを占めることは間違いない以上、アフリカの政治、軍事、外交は日本にとって重要な課題といえる。

北朝鮮とアフリカの深い関係

 アフリカと聞くと日本で暮らす我々とはあまり接点がないような気がする。しかし実はそうでもない。前回の記事でご紹介したようにアフリカは北朝鮮の重要な資金源になっている。  アルジャジーラによれば、北朝鮮は経済制裁を受け、核開発を行う余裕などないはずだが、自由主義国以外から資金を得て開発を継続しており、首都の平壌は空前の建設ブームに沸いている(参照:『North Korea’s Secret Money』–Al Jazeera)。  経済制裁が有効たったのは自由主義国が世界の鍵を握っていた時代の話で、もはや今はそうではない。自由主義国以外のほうが国の数も人口もGDPも大きい。自由主義国から経済制裁を受けてもそれ以外の国と貿易すればいいだけの話だ。  エセ民主主義も含めた自由主義国でない国とは、ロシア、中国、イラン、極論主義化の進むラテンアメリカや東南アジアの国々、モンゴルそしてアフリカだ。これらの国々の多くは急成長しており、まだまだ人手も物資も足りない。人口も多い。つまり取引先として理想的だ。その中でもアフリカは特に大きな成長の可能性を秘めている。  たとえばCNNの『Statues and ammunition: North Korea’s Africa connections』(2017年12月15日)によればアフリカの多くの国が北朝鮮と契約を結んでいるという。契約主体のひとつは万寿台(Mansudae)という北朝鮮企業だ。  すでに国連は調査を進めており、少なくとも国連に加盟している14のアフリカ諸国が万寿台と関係し、建設事業などを行っている。そのほとんどに銅像の敷設が含まれている。ちなみに、Korea Mining Development Trading Corporation (KOMID)は国連から北朝鮮の武器商人と名指しされ、2009年経済制裁対象にされている。  ヨーロッパ、アメリカ、中国が提供しない武器を北朝鮮のも特筆すべき点だ。モザンビーグ、ウガンダなどの国々は北朝鮮と武器関係の契約を締結していた。  北朝鮮とアフリカの関係は最近できたものではない。金日成の時代からアフリカに関わっており、資金や武器を提供していた。 こうしたことを日本政府もある程度は認識しており、北朝鮮と取引しているナミビアの企業2社の資産を凍結したこともある(参照:『Tokyo freezes North Korea-linked assets, including in China and Namibia』、The Japan Times、2017年8月25日)。  だが、北朝鮮は氷山の一角にすぎない。
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アフリカに広がる中国、ロシア、イランの影
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