アフリカで巨大な開発がある時には必ずといっていいほど中国が介在していることが多い。鉄道、道路、ビル、さまざまなものが中国企業によって建設されている。そのための費用は中国が融資している。つまり中国政府がアフリカの国に融資した金を中国企業が受けとって開発を行っている。融資なのでアフリカの国は利子をつけて返済する義務しなければならない。アフリカ大陸全体で100万人の中国人がいるとも言われている。
さらに、アフリカに注目しているのは中国だけではなく、その狙いも経済だけではない。
『INFORMATION MANIPULATION A Challenge for Our Democracies』(2018年8月、フランスのヨーロッパ・外務省と2つの外部機関との合同調査)によれば、アフリカは急速な発展を遂げる中でインターネットの普及では一足飛びにモバイルインターネット=スマホ利用に到達した。
急速なネットの普及がメリット以上に害悪をもたらす危険があることは東南アジアなどの国で証明済みだ。アフリカでも同様にSNSを温床にしてフェイクニュース、ヘイトなどが広がることとなり、影響力を持つグループや個人が誕生した。
ヨーロッパや北米を席巻したネット世論操作はターゲットを拡大しており、ラテンアメリカとアフリカが狙われている。このレポートによるとアフリカにはネット世論操作しやすい下記の特徴がある。
・地域に共通言語がある(英語、フランス語、スペイン語)。
・情報操作のための媒体がすでに存在する。
・多くのリテラシーの低い人々がネットを利用している。
・感情的になりやすい。
・民族、宗教間に緊張がある。
・植民地時代の君主国への憎しみがある。
すでにアフリカ各地でロシアのネット世論操作が確認されている。アフリカには植民地時代のなごりからフランス語人口が多い。そのため
ロシアのプロパガンダ媒体であるRTとスプートニクのフランス語版がよく読まれており、政治の場面でも引き合いに出されている。RTとスプートニクの編集者もアフリカの大衆が関心を持ちそうな話題を過激な論調で取り上げている。
さらに
アフリカの新聞やメディアが、AFPやロイターと一緒にロシアのプロパガンダ媒体のニュースを取り上げているために信憑性があるように錯覚してしまう。たとえばセネガルでは国内4位のニュースサイトでスプートニクの記事が頻繁に紹介されている。このサイトのフェイスブックページには150万人の参加者がいる。
アフリカではフェイスブックをニュースの情報源にする人々が多く、
ロシアの流す陰謀論や過激な論調の情報はアフリカの読者に好評だ。
ロシアのプロパガンダ媒体のフランス語版はフランス大衆への干渉の”おまけ”程度の位置づけだったが、2018年に入ってからアフリカをターゲットにした作戦を展開している兆候が発見された。
急激にアフリカ(特にマグレブとサハラ以南諸国)からのフェイスブックページへのトラフィックが増加していたのだ。
2018年1月2日、
コンゴ民主共和国(DRC)ゴマ市でフランスボイコットのネットキャンペーンが始まった。このキャンペーンはフランスに虐げられたアフリカの人々の力を結集しフランスを責めるもので、特にゴマ市にあるフランス諜報機関を非難していた。キャンペーンの元になったのは
いくつかの関係ない事実を組み合わせてもっともらしく仕立てたフェイクニュースだった。このキャンペーンが仕掛けられたものである可能性がある。
ロシアのアフリカへの干渉については、フランスのエコール・ミリテール戦略調査研究所のレポート
『THE DISSEMINATION OF RUSSIAN-SOURCED NEWS IN AFRICA』(2019年1月29日)で最新の状況が分析されている。ここでも近年ロシアが存在感を強めていることが指摘されている。また、アフリカ国内にロシア発の情報を拡散するウェブサイトやニュース(前述のようにアフリカのメディアはロシア発の情報を掲載する)のネットワークができあがっていたことも発見されている。
レポートでは、このネットワークを構成する各国のウェブサイトを3つに分類、整理している。
1つ目は「少ない拡散と目立つ露出」。ロシアのコンテンツを拡散する回数は少ないが、アクセスの多いサイトに掲載されているタイプだ。モーリタニア、ニジェール、ギニア、ガボン、コンゴがこの分類に当てはまる。
2つ目は「拡散回数が多く露出も多い」パターンで、マリ、セネガル、ブルキナファソである。
3つ目は「非常に多くの拡散と中程度の露出」で、カメルーン、象牙海岸、アルジェリアが該当する。レポートでは拡散の状況や影響などを包括的に整理している。
アフリカに干渉しているのはロシアだけではない。イランのネット世論操作も確認されている。
『IN DEPTH: Iranian Propaganda Network Goes Down』(2019年3月26日、大西洋評議会デジタル・フォレンジックラボ)によると、イランはイスラエル、アメリカ、サウジアラビア、インドネシアおよびアフリカ諸国に対してIUVM(International Union for Virtual Media)という組織を使ってネット世論操作を仕掛けていた。アフリカでターゲットとなっていたのは、ナイジェリア、エジプト、セネガル、モロッコ、エチオピアおよびその他である。
IUVMの存在は、サイバーセキュリティ企業、ファイアアイによる
2018年のレポートですでに言及されている。
ロイターの
『Special Report: How Iran spreads disinformation around the world』(2018年11月30日)によると、イランは15カ国に対して70以上のウェブサイトを利用したネット世論操作を仕掛けている。合計で100万人以上のフォロワーがおり、月間50万人以上が閲覧する。アフリカではエジプト、スーダンがターゲットとされていた。スーダンはかつてイランの同盟国であったが、現在はサウジよりになっている。