以上、本件の<関連年表>について、
前回記事の
7、
8ページを再びここに添えておく。
● 2015年3月31日:厚生労働省の姉崎統計情報部長らが毎月勤労統計の2015年1月分確報について事前報告。中江首相秘書官が「問題意識」を姉崎統計情報部長らに伝える。
● 2015年3月31日:同日に公表予定だった毎月勤労統計の2015年1月分の確報の公表の延期が発表される
● 2015年4月3日:1月分の毎月勤労統計の確報公表
サンプル入れ替えに伴う遡及改訂により、2014年10月の名目賃金は0.2から-0.1に、11月の名目賃金も0.1から-0.2に、変更され、プラスからマイナスに転じる
● 2015年6月3日:厚生労働省「第1回 毎月勤労統計の改善に関する検討会」
姉崎統計情報部長:
「皆様方も御承知のように、アベノミクスの成果ということで、賃金の動きが注目されておりまして、この研究会のテーマでございます
「毎月勤労統計調査」でとっている賃金、特に実質賃金の動きが世の中的に大変大きな注目を浴びております。昨日、4月の速報を発表させていただいて、プラス0.1ですけれども、24カ月ぶりにプラスになったということでしたので、昨日の夕刊、今日の朝刊も、こんなにいっぱい記事が出たのは何十年ぶりではないかというぐらい久しぶりに大きな記事になっておりまして、世の中的な関心が大変大きくなっているところです。
この「毎月勤労統計調査」は、先生方は御承知かと思いますが、2年又は3年置きに調査対象事業所の入れ替え、サンプルの入れ替えをするとなっておりまして、今年の1月に3年ぶりにサンプルの入れ替えを行いました。サンプルを入れ替えますと、旧サンプルと新サンプルの間でズレが生じますので、そこのところを調整するために、後ほど詳しく説明いたしますけれども、指数等を過去に遡って改訂するということをします。
賃金の動きが、今月上がった、下がった、どのぐらい上がったと注目されている中で、いきなり過去の3年間に遡って変わってしまったために、一部では、人騒がせな統計だとか、サプライズだとか、毎月勤労統計ショックだとか、いろいろな言葉で大変騒がれたというか、いろいろな御意見を各方面からいただくようなことになりました。
こうしたことも踏まえまして、今般、この「毎月勤労統計調査」に係るいろいろな課題について検討しようということで本検討会を開催することにした次第です。」
● 2015年8月7日:厚生労働省「第5回 毎月勤労統計の改善に関する検討会」
阿部座長:「最後「Ⅲまとめ」ですが、ここで「(2)サンプルの入れ替え方法」は、先ほど出てきましたが、
当面は現在の総入れ替え方式で行うことが適当としてまとめております。」
● 2015年9月3日:賃金について、中江首相秘書官が、安倍首相に答弁レク
● 2015年9月3日:小池晃議員が参議院厚生労働委員会で「一人当たりの賃金が伸びない」と質疑。
安倍首相答弁
「 一人当たりの平均賃金については、名目賃金は政労使会議などの取組によって2%を超える賃上げを実施しているわけであります。昨年もそうでした。16年ぶり、17年ぶりの高い比率の賃上げであります。そして増加傾向にあります。また、
実質賃金におきましても、4月、5月とゼロ近傍まで改善をしてきております。
確かに、6月には名目、実質共にマイナスとなりましたが、これは本年1月に行った調査対象事業所の入れ替えもありまして、相対的にボーナスの支給額が大きい30人以上の事業所において6月に支給した事業所の割合が昨年に比べて4ポイント以上も低かったものによるものと考えております。このように分析しております。
基本給を示す所定内給与は、4カ月連続のプラスであります。パートで働く方を除いた一般労働者で見ると14カ月連続のプラスでありまして、また、パートで働く方々の時給は、安倍政権になって最低賃金の大幅引き上げを2年連続で行ってきたことや労働需給が引き締まりつつあることもあり、ここ22年間で最高水準であります。
このように、
現在、賃金は基調として緩やかに増加しているものと考えているわけでございまして、雇用の状況も翌なっているわけでございますが、それとともに、
しっかりと実質賃金にも反映されるように我々もこの現在の現在の経済の好循環を回していきたいと、こう思っておりますが。」
● 2015年9月4日:厚生労働省担当者から阿部座長へのメール
「現在、検討会での検討結果については
官邸関係者に説明をしている段階であります」
● 2015年9月8日:自民党総裁選、安倍首相が無投票で
再選
● 2015年9月8日:厚生労働省担当者から阿部座長へのメール
「部内で検討した結果、第二種事業所では、部分入れ替え方式(ローテーション方式)を採用しているので
第一種事業所についても部分入れ替え方式で行えばよいのではないかと言われる可能性があるため あえて記述しないという整理にしたいと考えています (姉崎部長の意向もあります。)」
● 2015年9月14日:姉崎情報統計部長が中江首相秘書官と面談(午後の早い時間)
(中江首相秘書官は、記憶なし)
● 2015年9月14日:厚生労働省担当者から阿部座長へのメール(16:08)
「
委員以外の関係者と調整をしている中で サンプルの入れ替え方法について、部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきました。(ご存知の通り、報告書(案)では、総入れ替え方式が適当との記載を予定していました。)
このため、第6回では、報告書(案)ではなく、中間的整理(案)の議論ということで とりまとめをおこなわせていただきたいと考えています。
併せて、サンプルの入れ替え方法についても「引き続き検討する」というような記述とする予定です。
このため、検討会についても、引き続き行うことになる予定です。」
「検討会開催前の突然の方針の変更等でご迷惑をおかけしますが どうぞよろしくお願いいたします。」
● 2015年9月15日:「まとめ」の記載が、14時1分の「総入れ替え方式が適当」から22時33分の「引き続き検討する」へと変更される。
● 2015年9月16日:厚生労働省「第6回毎月勤労統計の改善に関する検討会」中間的整理(案)(阿部座長は欠席)
○久古谷課長 基本的には次にサンプルを替えるときと考えております。ただ、
次のサンプルの入れ替えを総入れ替えにするのか部分入れ替えにするのかについては、もう少し検討したいと思っております。恐らく、部分入れ替えを行うときについても、今までよりはギャップ自体は少なくなるのですが、ギャップが生じると思われますので、
そのギャップについてこのような方法で処理をしていきたいと思っているところでございます。
○永濱委員
次の変更のタイミングがいつごろになるかという情報は、一般の人からするとすごい関心があると思いますが、追記しないのですか。
○姉崎部長 次いつ変更するかという情報は重要なのですけれども、
サンプルの入れ替えのところで総入れ替え方式ではなく、部分入れ替え方式を検討したいと思っており、部分入れ替え方式につきましては千葉県から説明がありましたけれども、なかなか実務的にいろいろ困難な問題があるということもありまして検討するのに時間がかかることと、検討もそうなのですけれども、具体的にやろうとすると県との調整やシステムの改修等結構時間がかかってしまい、それが準備できないとなかなかできないのではないかと思いますので、次は何年何月にやりますというのを現段階ではなかなかはっきりとは言えません。
(中略)
○姉崎部長 (中略) 今後、内閣府に統計委員会という委員会がありますけれども、今、
統計委員会では未諮問、過去何年間かずっと諮問をされていない基幹統計についての確認作業というのを行っておりまして、何年かに分けて順番に未諮問の基幹統計の確認作業というのを、今年、毎月勤労統計が当たっておりまして、
秋以降の統計委員会で毎月勤労統計の状況はどうなっているのかというのを確認されることになっておりますので、中間的整理のことも踏まえて統計委員会に毎月勤労統計調査の状況について御説明をしたいと思っております。
それと並行して、先ほども申しましたように、サンプルの入れ替えのローテーション方式のことについても検討させていただいて、皆様方には来年の3月まで委員をお願いしておりますので、しかるべき時期に、大変恐縮でございますけれども、また検討会を開催させていただくことになるかと思っておりますので、その際にはまたよろしくお願いします。
● 2015年9月24日:安倍首相、「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、「新三本の矢」を発表。「希望を生み出す強い経済」として、GDP600兆円の目標をかかげる。
● 2015年10月16日:第16回経済財政諮問会議
○アベノミクス第二ステージに向けて
麻生財務大臣
「 次のページをご覧いただきたい。私どもは気になっているのだが、統計についてである。消費を見ていただくとわかるが、家計調査等々は、消費動向をタイムリーに把握する指標として期待されているにもかかわらず、有識者がよく指摘をされるように、販売側の統計、小売業販売と異なった動きをしている。また、高齢者の消費動向が色濃く反映された結果が出ているという言い方もされている。
毎月勤労統計については、企業サンプルの入替え時には変動があるということもよく指摘をされている。また、消費動向の中に入っていないものとして、今、 通販の額は物すごい勢いで増えているが、統計に入っていない。
統計整備の司令塔である統計委員会で一部議論されているとは聞いているが、ぜひ具体的な改善方策を早急に検討していただきたいとお願いを申し上げる。
また、総務省を始めとした関係省庁においても、GDP統計を担当する内閣府と協力して、これらの基礎統計の充実にぜひ努めていただきたい。これは確か5年に一度数字を変えているはずだが、その点について、いろいろな指数というものを、非常に拡大しているのにもかかわらず、ネット販売価格は家電を始め、ほとんど採用されていないのではないか等々の意見がよく出されるところでもあるので、よろしくお願いを申し上げたい。」
出所:「第16回経済財政諮問会議」(2015年10月16日)
資料4 企業収益等の動向/基礎統計の更なる充実について(麻生議員提出資料)
甘利大臣(内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 兼 経済再生担当大臣)
「 統計委員会は現在、私の所管であるが、総務大臣の所管に移管される。 家計調査で言うと、対象に書面を渡して家計簿をつけてもらうわけである。これが結構大変で、リアルタイムで話が来ないということがあるので、これを電子化できないか、また、非常にビビッドに報告ができるように、しかも細かい記入が省けるような手だてを検討しているようである。
それから、
サンプル数を入れ替えるときに落差が起きるというのは、サンプル数の入替えのシェアが大きく、対象が大幅に変わってしまうことで落差が出るので、時期をずらし一度に入れ替える数を減らして、入替え時の落差が出ないようにという工夫もしていくようであるので、それで対応していけるかと思う。
<文/上西充子 Twitter ID:
@mu0283>
うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「
国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。