統計の信頼性回復のためには、政府と与党はまず「不都合な事実」に向き合え

5.事実を曲げて組織や政権を守ろうとする姿勢は間違い

   以上、この間、何が問題になっているか、主要な論点に限って振り返ってきました。  毎月勤労統計の不正の発覚に端を発し、「徹底した事実解明を」との姿勢で、少なくとも見かけ上は与野党一致していた国会は、現在、統計手法の変更への官邸の介入を追及する野党と、その追及を阻むために国会への資料の提出や参考人招致を認めない与党との、対立関係にあるように見えます。  しかし、統計の信頼性の回復は、政府と国会が、そして与党と野党が、ともに一致して追及しなければならない課題です。そのためには、たとえ安倍政権にとって「不都合な事実」であろうと、また厚生労働省にとって「不都合な事実」であろうと、それらの「不都合な事実」をすべて明らかにして、何が起こったのか、なぜ起こったのかを、究明しなければなりません。そこからしか、再発防止は図れません。  「不都合な事実」はあくまで隠蔽して、事実を曲げてでも組織や安倍政権を守ろうとする――そのような姿勢は間違っています。過ちは過ちと認め、取るべき責任は取り、事実に即して再発防止を図る、その姿勢がなければ、統計の信頼性は回復できません。  また、政府・与党には、統計が示す現実を謙虚に受け止め、アベノミクスがなぜ実質賃金の上昇につながっていないのか、なぜ国民は景気回復の実感を持てずにいるのか、どのような政策が今、必要なのかを、問い直すことが求められます。  最後になりますが、私は昨年6月から、国会の審議を、切り取られて編集されたニュース映像ではなく、実際のやりとりをそのまま約3分ごとに切り取って解説つきで街頭上映する「国会パブリックビューイング」という取り組みを、団体を結成して続けています。  国会では質疑とかみ合わない論点ずらしの答弁や、意味なく冗長な背景説明の答弁などで、野党の質疑時間が奪われ続けています。野党の指摘が不当なものであるかのように印象づけることを目的とした答弁も、横行しています。  私たちが主権者として国会を監視しなければ、そのような国会の機能不全は続きます。そして「不都合な事実」も、隠され続けます。その影響は、私たちの暮らしに跳ね返ってきます。よりよい社会の構築に向けて、国会が本来の機能を果たしうるために、私たちは主権者として、不断の努力を重ねていきます。  ご清聴、ありがとうございました。
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