統計の信頼性回復のためには、政府と与党はまず「不都合な事実」に向き合え
4.毎月勤労統計の部分入れ替え方式への変更
2015年9月4日のメールには、「検討会での検討結果については官邸関係者に説明をしている段階」との記述がみられます。そして第6回検討会の2日前の9月14日のメールには、「委員以外の関係者と調整をしている中で、サンプルの入れ替え方法について、部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきました」との記述や、「検討会開催前の突然の方針変更でご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」との記述がみられます。 これまでの答弁で、9月14日に姉崎部長は、中江秘書官と会ってコメントを受けたことを認めています。また、取りまとめの文書の「まとめ」部分の記載が「総入れ替え方式が適当」から「引き続き検討する」へと変更されたのは、9月14日の14時1分から同日22時33分までの間であることがわかっています。「委員以外の関係者」とは、中江秘書官のことと思われるとの、根本厚生労働大臣の答弁もあります。 中江秘書官は、9月14日に姉崎部長と会った記憶がないと答弁しており、姉崎部長は、中江秘書官とは会ったものの、文言の修正の指示はそれ以前に行っていたと答弁しています。いずれの答弁も、官邸の不当な介入を否定するための、苦しい弁明と思われます。 また、9月3日には参議院厚生労働委員会における小池晃議員の質疑に備えたレクを、中江秘書官が安倍首相に行っており、安倍首相は、「一人当たりの賃金が伸びない」との小池議員の指摘に対し、毎月勤労統計の名目賃金と実質賃金に言及しながら、答弁を行っています。「しっかりと実質賃金にも反映されるように我々もこの現在の経済の好循環を回していきたい」と首相は答弁していますが、2015年の4月と5月は、実質賃金で「ゼロ近傍まで改善」とはいうもののマイナス、そして6月は名目賃金、実質賃金ともにマイナスとなっており、実質賃金が伸び悩んでいることが、「成長と分配の好循環」を謳ったアベノミクスにおける「不都合な事実」であったことは、疑いようがありません。 以上の事実関係を率直に見れば、賃金水準の遡及改訂による下振れを防ぐために、統計手法の変更が官邸主導で進められ、専門家の検討結果を尊重しようとする厚生労働省の意向に反して、強引に検討会の結論が曲げられた、とみるのが一番、自然です。2月22日夕刻、厚生労働省から毎月勤労統計検討会阿部座長へのメールが公開された。これによれば「委員以外の関係者」の意見によって「突然の方針が変更等」があったこと明らかだ。「官邸関係者の説明をしている段階」との記述もある。これまでの国会答弁と大きく異なる事実だ。 pic.twitter.com/u1y2UQzy4p
— 衆議院議員 逢坂誠二 (@seiji_ohsaka) 2019年2月23日
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