今回は、2018/12/20日韓軍事インシデント(電探照射問題)について、日韓両政府が発表した公式発表をもとにして事実を再構成しました。これは、本連載を通じて繰り返し述べているように、
近隣友好国同士の軽度~中度の軍事インシデントとしては典型的なもので外交問題化するなど考えられないものであり且つ、たいへんに今後の教訓に富んだものです。
実のところ、防衛省、韓国国防部ともに公式発表は一貫した主張であって内容もシンプルです。日本側からの発表が具体性に欠き曖昧模糊としていますが、P-1という日本防衛の耳であり目であり、一番槍(※注5)である機密の塊が主役である以上やむを得ないところがあります。
(※注5:P-1などの哨戒機を「丸腰」「非武装」「丸裸」と称する政府寄生者や政治業者が多く見られるが、これは
完全に嘘である。無知ないし、悪意甚だしい。P-1の場合、
翼下に対艦ミサイルを8発搭載できることが「売り」であり、
爆弾倉には魚雷、爆雷、爆弾ほか多種多様の武器を搭載できる。平時においては、費用と安全上、機密保持の理由から対艦ミサイルは懸下しないことが一般である。一方で、あたりまえだが防衛省、海上自衛隊は、平時の哨戒機の武装については一切情報開示していない。対艦ミサイルは視界範囲外から発射するし、爆弾倉に何がはいっているかは外からはわからない。
P-1やP-3Cは第二次大戦では重陸上攻撃機にも分類しうるたいへんな重武装の軍用機である。なお、冷戦期の近未来軍事小説では、P-3CやS-3といった対潜哨戒機が、核爆雷、核魚雷、対艦ミサイルによって第三次世界大戦の火蓋を切る描写が多々見られた。その程度には哨戒機の重武装については常識である)
私には、このような今後のための教訓に富んだ貴重なインシデントがなぜ深刻な外交問題化し、日本側では官民挙げてのデマゴギーに基づくヘイトが垂れ流されるのか理解できません。まさに泰山鳴動鼠一匹そのものです。そして、日本は多くを勝手に失いました。
次回は、日韓両政府による1/21,22にでた公式声明や最終報告書を突き合わせて解説する予定です。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』番外編――広開土大王射撃電探照射事件について7
<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:
@BB45_Colorado>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についての
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