レーダー照射問題、日韓双方の発表をとことん突き詰めてわかる8つの「ファクト」と「フェイク」
軍隊や軍事組織が作戦行動中の座標を秘匿するのはよくあることですが、現状では日本側の説明に説得力はほとんどなく、情報戦では完敗しています。本件事態発生のGPS座標など軍事機密でも防衛機密でもありませんので、韓国側が韓日中間水域(日韓暫定水域)であるとおおよその位置まで示している以上、日本側は大和堆付近のどこの座標で、それは日本側EEZであるか否かということを明確に示すほかありません。
なお、日本側で流布された偽図面とフェイク・ニュースは、現在急速に消えていっていますが、現時点でもいくつか検索(「レーダー照射 場所」)で見つかります。
また、座標については驚くほど日本側報道に情報がないことにも驚かされます。結果、この稿でも出所の明確な日本側主張の事態発生場所を示した図を引用できません。情報戦において完敗しています。
ここで一つ気になる図面があります。
(参照:“北の違法操業の監視開始 漁期前に先手 産経新聞” 2018/5/25)
産経新聞が昨年5月に報じた図では、日韓暫定水域が存在せず、日本側の主張するEEZが示されています。
「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定」(「新協定」1999 1/22発効)によって、このような図は公式には存在しないはずです(※2)。
しかし、漁業協定の所轄官庁ではない防衛庁が、日本のEEZについて日韓漁業協定を無視した発表を行っている可能性は皆無ではありません。事実、防衛省からは「日本側EEZ内」という言葉だけが表明されており、図面一つ出ていません。
また、もしも仮に日韓暫定水域を無いものとした場合、韓国側が主張する韓日中間水域内と防衛省が主張する「能登半島沖日本のEEZ内(大和堆近く)」は一致します。これは極めて深刻なことで、未だに確認されていないことではあってはならないことです。このような疑念など本来は生じることなどありえないのですが、防衛省の起こしてきた昨今の莫大かつ深刻な不祥事と今回見せた秘密主義が故に強い疑念が生じてしまいます。報道陣の今後の努力に期待します。
(※2:産経新聞の当該記事は、北朝鮮漁船を対象としているので、日韓中間水域を削除して記述する理屈は辛うじて通用する。しかし、北朝鮮漁船は、日韓双方にとっての取締対象である為、日韓暫定水域では海保、海警が共同してでも取り締まるべきものである。また、誤認などの可能性も発生する為、やはり日韓暫定水域は北朝鮮籍漁船が対象であっても明示すべき重要な水域である)
なお、繰り返し述べますが、事態発生の座標が日本側EEZ内であったか否かは、本質的には無関係です。日韓暫定水域内であってもEEZ内であっても海難救助活動(SAR)には無関係です。そもそも公海ですから、航行の自由が保証されています。唯一、関係があるのは、漂流中の北朝鮮籍漁船の存在を通報した韓国漁船がどこにいたかで、日韓暫定水域内であれば全く無問題、日本側EEZ内であれば、漁労していたか否かの記録を求める事ができるといった程度です。なお、日本側が遭難船を通報した韓国漁船について日誌の提出を求めたなどの報は一切ありません。
このように、何処で“Where”ですら分かっておらず、それどころか防衛省が「日本側EEZ」をどう定義しているのかにすら強い疑義が生じる有様です。
もはや座標を秘匿することを諦めて、正確な座標を公表するときではないでしょうか。これは情報公開をしてこなかったが故に生じた失敗です。
この連載の前回記事
2019.01.25
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