運用が難しく金食い虫……。日本が導入を検討する「早期警戒衛星」ってどんなもの?

米国が運用する早期警戒衛星「SBIRS」の想像図 Image Credit: Lockheed Martin

早期警戒衛星を日本に導入する場合の課題

 早期警戒衛星は現在、米国やロシアが運用しており、中国も構築を進めているといわれる。またフランスは将来の開発に向けて、2009年に試験機を打ち上げ、開発した赤外線センサーを試験したり、熱の地図を作成したりしているとされる。  日本ではまだ正式に開発や配備は決定されていないものの、日本も早期警戒衛星を保有しようという話は今に始まったことではなく、今回の提言が行われるもう何年も前から、政府や防衛省から要求や検討は行われていた。しかし実際に日本も独自に開発、配備するとなると、さまざまな課題がある。  まず必要となるのは、赤外線センサーの開発である。ただ、これについてはすでに2013年から、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と防衛省技術研究本部(現在の防衛装備庁)との間で、宇宙用の赤外線センサーの研究協力体制が始まっており、さらに2014年度には開発に向けた予算もついている。詳細は明らかにされていないが、いつ早期警戒衛星の開発が決まってもよいように、現在もセンサーの研究・開発は続いているとみてよいだろう。  くわえて、技術実証機を開発して打ち上げ、センサーの試験をするとともに、熱の地図を作ることも必要になる。もしかすると米軍から提供を受けられる可能性もあるが、おそらくは最大級の機密に該当するものであろうし、仮に受けることができても、それを利用し、さらにアップデートしていくためには、結局は独自でノウハウを積み重ねなければならない。その上で、ようやく早期警戒衛星の運用が可能になる。  早期警戒衛星の衛星そのものも、日本は基本的に北朝鮮、あるいは中国を中心に監視すればよいので、衛星の総数は、米国のように世界各地に目を光らせる必要がある場合に比べれば少なくて済む。ただそれでも、故障した場合の予備機などを考えると2~3機は配備していく必要があるし、また衛星にも寿命があるので、1機につき10年ほどの間隔で、後継機や新型機に更新していかなければならない。  さらに、早期警戒衛星からのミサイル発射の警報を、政府や防衛省、そして迎撃を担当する艦艇や部隊などに、すばやく正確に伝え、ミサイルの迎撃や国民の避難にいかす情報伝達のシステムも必要になる。
次のページ
最大の課題は「金食い虫」な点
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会