米国がかつて運用していた早期警戒衛星「DSP」の想像図 Image Credit: U.S. Air Force
そして技術的な課題だけでなく、当然ながらお金の問題も重要になる。たとえば米国は、現在配備している早期警戒衛星「SBIRS」の開発で、2013年までに188億ドルものコストを投じていることがわかっている。それも、当初は47億ドルの予定だったものが、開発遅延などでコストも期間も大きく超過した結果である。
1960年代から早期警戒衛星の開発、配備を進めてきた米国ですらこういう状況になるということは、これから新規に開発しなければならない日本も、相当額のコストを覚悟する必要がある。さらに、一度配備が始まれば、運用はもちろん、後継機や新型機の開発や打ち上げなどで、毎年コストが積み重なっていく(もちろん日米とでは必要な衛星数などに違いがあるので金額にも差が出るだろう)。
もっとも、自衛隊の艦艇や地上配備型のレーダーなどだけでは、ミサイルまでの距離や地球の丸みなどの関係で、探知能力にどうしても限界がある。北朝鮮などから発射されたミサイルを早期に探知し、迎撃や避難といった対処を行うためには、地上や海上のレーダーはもちろん、早期警戒衛星をもち、それらを連携させることが重要になる。
多額の費用によって得られるものは唯一無二の価値があるものの、そもそもその費用をどのようにして捻出し、さらに継続的に負担し続けていくかは、大きな課題である。
<取材・文・写真/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
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【参考】
・SBIRS Fact Sheet・Lockheed Martin(
http://www.lockheedmartin.com/content/dam/lockheed/data/space/documents/sbirs/SBIRS_Fact_Sheet_(Final).pdf)
・SPACE BASED INFRARED SYSTEM (SBIRS) > Los Angeles Air Force Base > Fact Sheets(
http://www.losangeles.af.mil/About-Us/Fact-Sheets/Article/734550/space-based-infrared-system-sbirs/)
・Testimony Before the Subcommittee on Strategic Forces, Committee on Armed Services, U.S. Senate – SPACE ACQUISITIONS DOD Is Overcoming Long-Standing Problems, but Faces Challenges to Ensuring Its Investments Are Optimized(
https://www.armed-services.senate.gov/imo/media/doc/Chaplain_04-24-13.pdf)
・Space Based Infrared System(
http://www.globalsecurity.org/space/systems/sbir.htm)
・SPIRALE – eoPortal Directory – Satellite Missions(
https://directory.eoportal.org/web/eoportal/satellite-missions/s/spirale)