運用が難しく金食い虫……。日本が導入を検討する「早期警戒衛星」ってどんなもの?

早期警戒衛星の概念図 Image Credit: U.S. Air Force

単に衛星を配備しただけではだめ

 ただ、早期警戒衛星を使いこなすためには、ただ単に、赤外線センサーをもった衛星を打ち上げればよいというものではない。  前述のように、地球上にはミサイルの熱以外にも、高温になっている部分は多くある。温泉地などの地熱の温度が高いところにはじまり、火山の噴火や山火事、雷や隕石、スプライトと呼ばれる高い高度での放電・発光現象、そして飛行機や、ミサイルではない宇宙ロケットの打ち上げ――。地表からはさまざまな熱が出ており、むしろミサイルの発射はその中の例外中の例外のような出来事である。  その無数の熱源の中からミサイルの発射の熱のみを検出するためには、あらかじめ、どこにどんな熱源があるのかを知っておく、いうならば「熱の地図」が必要になる。また、温泉地などや活火山などのように、常に同じ場所にある熱源だけならまだしも、自然現象や突発的な災害のように、突如としてある場所から熱が発生する事象も多いので、どこ場所にどのような熱源が発生しやすいのか、またその温度は通常どれくらいなのか、ということを知っておき、ミサイルの発射と区別できるようにする必要もある。  また、固定式の発射台から発射されるミサイルであれば、その発射台がある場所を重点的に監視すればよいものの、最近の北朝鮮のように湖畔や山の中、さらに海中の潜水艦など、不特定の場所から突如として発射されるミサイルに備えるためには、常に広い範囲を見渡しておかねばならない。さらに、熱を監視されているということを逆手にとって、偽の熱源を用意するなどして本物のミサイルの発射をカモフラージュされることもあるだろう。  こうした事情から、早期警戒衛星の運用は一朝一夕にできるものではなく、事前の準備はもちろん、配備したあとも常日頃から継続的に情報を集め、分析を続けることが必要になる。そうした難しいノウハウの積み重ねの上に、あるとき発生した熱源がミサイルか否かを判別でき、そして迎撃ミサイルの発射などの対応を行うことができるようになる。  早期警戒衛星は、この運用が最も難しい。技術や人材育成といった話でもあるし、何か別の事象をミサイル発射と誤認して、反撃のミサイル攻撃を行ったりすると、それがもとで戦争が起こってしまう危険もある。そのため衛星のセンサーも、そのデータを分析する人も、そしてそれをもとに対応を取る人も、ミスをしないことが厳格に求められる。  もちろん日本には敵国を攻撃する能力はないので、こうした場合の最悪のケースは迎撃ミサイルを発射することなどにとどまるだろうが、それでも周辺国に誤ったメッセージを送ることにはなるため、衝突の引き金になる可能性はある。
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導入しても課題はある
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