1万人を面談した産業医が考える「働き方改革」を誰も推進したがらない本当の理由
2017.02.26
有給消化率を改善させた”ある企業”
政府は2020年には有給休暇取得率70%を目標にしています。
その実現のためには、新たな制度を設けるよりもまずは、このことに集中するべきではないでしょうか。実現のために行政にいい具体案がなくても、民間における有給休暇取得率の高い企業の事例をどんどん紹介してくれれば、社員が参考にできるものがあると感じます。
例えば北海道を代表するお菓子「マルセイバターサンド」を製造する「六花亭」は過去20年間、有給取得率が100%です。そこには作業効率の見直し、設備投資による作業時間の短縮、社内旅行を制度化するなどさまざまな施策があったようです。
また、オリックスでは年次有給休暇を連続5日間以上取ると最大5万円の奨励金が出る制度を2017年4月から導入し、有給休暇の取得率を現在の65%から80%以上へ上げることを目指しています。
この2つの事例の背景にあるのは、単なる「早く帰りましょう」「有給取りましょう」の推奨ではなく、従業員各々が趣味を楽しめる形を作り出した結果、従業員主体で作業効率が見直されたり、個々人の技術向上があり、それが働く時間の短縮につながったのだと推測します。
現在進行中の働き方改革は働き方の効率化や合理化、時間的要素を含めての評価などに踏み切れない日本企業の負の文化を、働き方改革と称して形を変えることで、目新しく対策した気になるだけのような気がしてしまうのは私だけでしょうか。
残念なことに、どこの会社にもありそうで、解決できなさそうなこの問題は、やがて「解決不可能な問題を議論しても意味がない」としてうやむやになり、これからも「変わらない予感」が漂ってしまっています。
<TEXT/武神健之>
【武神健之】
たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある
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