しかし、その後の宇宙開発の発展と、日本を取り巻く情勢の変化に伴い、「平和目的=非軍事」という解釈にだんだんと齟齬が生じてくる。
1985年、政府は自衛隊による衛星利用に関して「一般化原則」を示した。当時、すでに世の中には衛星を使った通信(衛星放送など)がありふれていたものの、前述の国会決議などに反するという理由で、自衛隊は使うことができなかった。
現在、自衛隊が利用している通信衛星「スーパーバードC2」。民間向けのテレビやラジオ放送をメインに行いつつ、積んでいる一部の機器で防衛省・自衛隊に通信を提供している Image Credit: 三菱電機
しかし1983年、硫黄島に駐留する自衛隊が、宇宙開発事業団の運用する通信衛星を利用したのを契機に、1985年には海上自衛隊が米軍の軍事通信衛星を利用するなど、徐々になし崩しとなっていった。そして同年政府は「『平和の目的に限り』とは、『その利用が一般化しない段階における自衛隊による衛星の利用を制約する趣旨』だ」とする見解を示した。つまり「すでに一般化している衛星通信を自衛隊が利用するのは問題ない」ということである。これにより自衛隊は、一般と同程度ではあるものの、衛星を使った通信をおおっぴらに利用することが可能になった。
そして2008年には「宇宙基本法」が制定。「国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずるものとする」と定められ、安全保障を目的に宇宙を軍事利用すること、すなわち米国のように、人工衛星を使って偵察したり、通信をしたりといった、いわゆる”軍事利用”が十分に可能になったばかりか、推奨にも近い形で認められることになったのである。