防衛通信衛星「きらめき2号」、打ち上げ成功。防衛省が初めて衛星を持つに至った経緯と重要性

非侵略から非軍事へ「平和目的」の意味の変化

 防衛省が独自の通信衛星をもつに至った経緯、あるいはなぜこれまで独自の衛星をもっていなかったのかについて語るには、約半世紀前にまで遡らなければならない。  1969年、科学技術庁に属する機関のひとつとして宇宙開発事業団が設立されるのに合わせ、「宇宙開発事業団法」が定められることになった。この法の第1条には「平和の目的に限り、ロケットや衛星の開発、打ち上げを行う」という文言が入っている。この「平和の目的に限り」という言葉の解釈をめぐって、やや議論が巻き起こることになった。  というのも、たとえば宇宙から地上を攻撃、侵略するような兵器を開発することが、「平和目的」に反するのは一目瞭然で、また1967年に発効された宇宙条約でも、宇宙の平和利用が謳われ、宇宙空間や月などの天体に大量破壊兵器を配備することは禁止されている。宇宙条約は米国やソヴィエト連邦(当時)も批准し、実際にこれまでそのような兵器が配備されたことも(少なくとも公式には)ない。しかし、宇宙から地上を監視する偵察衛星や、軍艦や地上部隊などが通信に使う軍用通信衛星など、宇宙を軍事目的に利用することに対しては、宇宙条約では明確に禁止されておらず、周知のとおり米ソをはじめ、さまざまな国が打ち上げ、運用している。  一方日本では、憲法9条との兼ね合いもあり、宇宙条約の平和利用、そして宇宙開発事業団法の「平和の目的に限り」という文言について、「非侵略」であるのは当然として、「非軍事」でもあると解釈すべきであるとの意見が出された。つまり他国のように、人工衛星を使った偵察や軍用通信さえも禁止すべき、という考えである。この意見は、当時の科学技術庁長官をはじめ、おおむね同意されることになり、何らかの法律や付帯決議として「平和目的=非軍事」と明記されたわけではないものの、「平和の目的に限り」という文言が「非軍事」である、という解釈は、その後長く続くことになった。
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消えた「平和目的=非軍事」の解釈
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