トランプ大統領はいつもの脅しを使って、米国で不法移民を保護している都市に対して中央連邦交付金を撤回する命令書にも署名した。<ニューヨーク、ロサンジェルス、シカゴなど全国に300都市で移民の保護>をしているのだが、それらが撤回の対象になる。しかし、地方都市では民主党が優位にあり、中央政府からの命令も法的に拒否できる権利を持っていることから、大統領令もどこまで効力を発揮できるか未知数である。(参照「
Sin Embargo」)
また、メキシコ政府も米国内にあるメキシコ領事館に移民への相談に充分に乗るようにメキシコ外務省から指令が出されている。
今月31日にワシントンにて トランプ大統領とペーニャ・ニエト大統領の会談が予定されていた。しかし、1月26日の午前中にトランプ大統領が<「壁の建設費を負担しないのであれば、予定されていた会談をキャンセルするが良いであろう」>とツイートした。
メキシコ国内、そして議会の与野党議員からこの様な屈辱的な会談に向かう必要はないとしてキャンセルするように大統領に数日前より要望が出ていた。その結果、今回のトランプの高慢な姿勢を前に、ペーニャ・ニエトはトランプのツイートに答えて<「今朝、ホワイトハウスで予定されていた会談に向かわないことを伝えた」>と同じくツイートしたのである。(参照:「
El Mundo」)
トランプが先手打った感じであったが、ペーニャ・ニエトにとってはトランプの脅迫的な先手は会談をキャンセルするのに良い口実となった。これから、メキシコ政府は国連の国際司法裁判所に今回の米国のメキシコの意思を無視した<人権侵害と差別主義に基づいた一方的な決定>を不服として提訴する形で動くように思える。(参照:「
HispanTV」)。
現時点ではNAFTAの合意は決裂したようなものである。
<文/白石和幸 photo by
Wonderlane via flickr(CC BY 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。