世界最先端の性能をもつ「ひまわり8号」の打ち上げ、そして万が一の際の代わりとなる「ひまわり9号」の打ち上げで、私たちは今日も明日も、一週間先までも、天気予報を知ることができ、そして台風の進路予測は被害を少しでも防ぐことにつながり、さらに将来の気候変動を予測するデータが積み上げられつつある。
しかし、そうした仕組みが完成した経緯はあまりにも曲がりくねったもので、もしかしたら実現せず、ふたたび日本から気象衛星が失われる可能性さえあった。
前述のように、2022年からは「ひまわり9号」が主となり、「ひまわり8号」が予備機として待機する予定となっている。2022年には「ひまわり8号」が設計上の寿命を迎える予定で、続いて「ひまわり9号」も同様に寿命を迎えることになるが、たいていの人工衛星は設計上の寿命より長生きするのが常であるため、「ひまわり8号」も「ひまわり9号」も2028年ごろまで運用される計画となっている。
つまり遅くとも2020年代後半までには、あるいはもし、より安全策を取るのであれば2020年代の前半に、「ひまわり10号・11号」にあたる次の新しい衛星が打ち上がっているか、少なくとも準備が進んでいなければならない。私たちの毎日の生活と地球の未来のためにも、今後はすんなりと、”複数”の気象衛星の開発と打ち上げが決まることを期待したい。
<取材・文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/about/
【参考】
・気象庁|報道発表資料 H-IIAロケット31号機による「ひまわり9号」の打上げ結果について(
http://www.jma.go.jp/jma/press/1611/02b/20161102_himawari9_launch_successful.html)
・リーフレット「新しい静止気象衛星-ひまわり8号・9号-」[pdf形式:4.3MB](
http://www.jma.go.jp/jma/jma-eng/satellite/materials/Himawari89/himawari89_leafret2/201507_leaflet89.pdf)
・気象衛星の危機的状況:松浦晋也のL/D(
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/07/post_e23e.html)
・気象衛星センター | ひまわり8号・9号 | はじめに(
http://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/himawari89/)
・三菱電機 from ME:DSPACE 世界最高性能の次世代型観測センサを世界で初めて搭載。開発は「時間との戦い」-「ひまわり8号」プロジェクトマネージャーに聞く(
http://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c1409_1.html)