気象衛星「ひまわり9号」打ち上げ成功。2輪のひまわりが見守る私たちの生活と地球の未来

鳥嶋真也

重要な“予備機”という存在

「ひまわり8号」のAHIが撮影した地球 Image Credit:気象庁

 今回打ち上げられた「ひまわり9号」は、2014年に打ち上げられた「ひまわり8号」の”予備機”として機能する。もし運用中の「ひまわり8号」が万が一、故障などで観測ができなくなった場合には、すぐに「ひまわり9号」が観測業務を引き継ぐ。  そのため「ひまわり9号」によって、これまでよりも天気予報が当たりやすくなったり、台風の進路をより正確に予測できるようになったりするわけではない。しかし、この予備機という存在は、言うまでもなく重要なものである。  ところが、日本は以前こうした予備機を持っておらず、一時期気象衛星を失いかけたことがあった。 「ひまわり」シリーズの打ち上げは1977年から始まり、以来数年おきに新しい「ひまわり」が打ち上げられてきたが、1995年に打ち上げられた「ひまわり5号」まで予備機はなく、設計上の寿命が近づいたら新しい衛星を打ち上げる、という方針を取ってきた。つまり、もし観測中の衛星が壊れたら、その時点で宇宙からの気象観測ができなくなるということを意味しており、実際綱渡りのような運用を強いられた時期もあったという。  その最も大きな影響が出たのは1999年のことだった。この年、設計上の寿命が近づいていた「ひまわり5号」の後継機として新しい気象衛星が打ち上げられたが、ロケットの打ち上げ失敗によって失われたのである。結局「ひまわり5号」は寿命を超えて運用が続けられることになったが、次第に限界が訪れた。そこで気象庁は米国の海洋気象庁(NOAA)から、待機中だった気象衛星「GOES-9」を借り受け、なんとか気象観測を続けることができた。  その後、2005年に「ひまわり6号」が打ち上げられ、GOES-9からバトンタッチし、さらに2006年には予備機となる「ひまわり7号」も打ち上げられた。長い綱渡りの期間と、危うく綱から落ちそうになった経験を経て、ようやくひとつの衛星が故障したり、新しい衛星の打ち上げが遅れたりしても、気象観測そのものには大きな影響が出ないような体制が整ったのである。  なお、現在は「ひまわり8号」が主、「ひまわり9号」が予備機となっているが、2022年からは立場が入れ替わり、9号が主となり、8号がバックアップとなる予定となっている。
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紆余曲折を経て生まれた気象庁初の気象衛星
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