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H-IIBロケットの第2段機体。第1段との分離後、積み荷(今回であれば「こうのとり」)を最終的な目的の軌道まで送り届ける役割をもつ
一方、「こうのとり」を分離した後のH-IIBの第2段機体は、「こうのとり」とほぼ同じ軌道、言い換えれば国際宇宙ステーションに比較的近い軌道にとどまることになる。もしそのまま放っておくと、タンクの中に残った推進剤やバッテリーなどが爆発してスペース・デブリ(宇宙ごみ)が発生し、デブリがステーションと衝突する危険がある。
また、第2段機体は永久に軌道にとどまり続けるわけではなく、時間が立てば自然に高度が落ちて地球の大気圏に再突入することになるものの、もし人家のある地域の上空で再突入すれば、燃え残った破片が地上に落下し、人や建物に被害を与える危険もある。
そこで三菱重工では、第2段機体を軌道から離脱させ、太平洋上の狙った海域に落とし、安全に処分する「制御落下」という作業を実施している。H-IIBの2号機から毎回行われており、これまで4機連続ですべて成功している。
制御落下は、まず「こうのとり」を分離した後のH-IIBの第2段機体の状態を確認し、問題がなければ機体を進行方向の逆向きに回転させる。そして地球を1周し、種子島にあるアンテナから通信ができる範囲に戻ってきた際に、再度機体の状態や落下の推定点が確認され、ここでも問題がなければ、エンジンを進行方向の逆向きに噴射、いわゆる逆噴射を行う。
逆噴射によって速度が落ち、軌道から外れた第2段機体は、打ち上げから約100分後に南太平洋の上空で大気圏に再突入する。機体の大部分は燃え尽き、もし燃え残った破片があっても、あらかじめ立ち入り禁止が設定された安全な海上に落下する。
こうしたロケット機体の制御落下は、欧州や米国などの一部で実施されているのみの、世界的にもまだ実験段階の先進的な技術である。
H-IIBでの実施に向けては、機体の健全性や軌道の状態を確かめるための軌道離脱可否判断システムの開発や、第2段ロケット・エンジンを小さな推力で動かすための新しい運転方式の適用など、いくつもの技術開発が行われた。