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H-IIBロケットの第1段機体。赤いカバーで覆われた2つの物体がロケット・エンジン。1基だけでもジャンボジェット機のエンジンすべてを合わせたのと同じくらいのパワーが出る
三菱重工は現在、「H-IIA」と「H-IIB」の2種類のロケットを運用している。H-IIAは2001年に初めて打ち上げられて以来、天気予報でおなじみの気象衛星や、災害など有事の際に地表を撮影する情報収集衛星など、日本から打ち上げられる人工衛星の大半はH-IIAが担っている。
一方、国際宇宙ステーションへ補給物資を運ぶ「こうのとり」などは非常に重いため、H-IIAでは能力が足らず、打ち上げることができない。そこで開発されたのが、H-IIAよりさらに大型のH-IIBロケットである。H-IIBは2009年9月11日に試験機(1号機)が打ち上げられ、ぶっつけ本番ながら、国際宇宙ステーションに物資を補給する補給機「こうのとり」を無事に宇宙へ送り届けている。以来、1年強に1機ほどのペースで計5機が打ち上げられ、すべて成功している。
H-IIBとH-IIAとの大きな違いは、まずより強力なパワーを出すために、1段目の機体に装着されるエンジンが1基から2基に増えたことにある。このエンジンは1基だけでもジャンボジェット機のエンジンすべてを合わせたのと同じくらいのパワーが出る。
そしてエンジンが増えたことに合わせ、推進剤(ロケット燃料と酸化剤)の搭載量を増やすため、第1段機体が太く、長くなっている。その結果、H-IIBはこれまで日本が開発したロケットの中で最大の大きさをもつ機体となり、その全長は約57m、推進剤などを満タンにした際の質量は531トンにもなる。
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第1段機体の側面には、三菱重工のロゴと、日の丸、そして「NIPPON」の文字が輝く
ところで57m、531トンと聞くと、ある世代以上の方は『コンバトラーV』のエンディングを思い出すかもしれない。あの歌の中で、コンバトラーVは「身長57m、体重550トン」と説明されている。鉄の塊のような巨大ロボットとほぼ同じ大きさ、重さということは、ロケットもそれだけ頑丈なのかといえば、実はそうではない。
ロケットは、その大部分がアルミ合金製の推進剤タンクで占められており、そこに推進剤が満タンまで注入される。なおかつ軽くするためにタンクの壁面は壊れない程度に薄く造られている。そのため、ロケットの大きさと軽さの比率は、同じように薄くて軽く、それでいてつぶれない強度があり、中に液体がたっぷり入っている缶ジュースや缶ビールと同じくらいだとも言われている。そこに、こちらもできる限り軽く造ったエンジンやコンピューターを載せ、宇宙へと飛んで行く。その姿は巨大ロボットのような質実剛健さとは程遠い(逆に言えばコンバトラーVの体重の設定が軽すぎるということでもある)。