トルコの政治をより民主化させるとして、エルドアンが首相の時に議会で彼が率いる政党の勢力を利用して軍部の改革に踏み切ったことも、軍部の不満を増幅させた。それまでは軍部が議会制主義に依存することなく独自の決定権をもっていたのを今後は軍部の最高指揮官の任命など全て議会の承認を必要とするようにしたのである。これで軍部の勢力を抑え、議院内閣制度を強める形にした。しかし、この改革の結果、民主化を主張したエルドアン自体が独裁者として君臨する方向に向かっているのである。
こうした独裁を行っても経済が回復していればまだ誤魔化しも効いただろう。しかし、経済面においても2000年代前半の高度成長の時代は終わったと言われている。現在、ヨーロッパの景気低迷やトルコ国内にいる200万人の難民への支援費用の負担、更にロシアからの制裁などでトルコの景気は落ち込んでいる。そして現在置かれているトルコの外国に与えるイメージの低下によって外国からの投資も減少している。このような現状を生んだのもエルドアン大統領の独裁政治が影響している。
以上に挙げたことなどが理由で軍部の中でも政権交代の必要性があると感じる軍人が次第に多くなって行った。それが今回のクーデターに繋がったものである。
クーデターの結果、5人の将軍と29人の大佐を主軸に2800人の軍人が拘束され、2700人の判事が職務を更迭されたという。すなわち、軍人と判事ら6000人余りが関与していたことになる。