オーバーランに速度超過。頻発する軽微な鉄道トラブル、その背景は?

運転士の技量低下を指摘する声も

 増える微細な鉄道トラブルだが、その背景に「運転士をはじめとする関係者の技量が下がっているのも一因では?」と指摘するのは元運転士の男性だ。 「最近は技術が進歩したおかげで、運転士にはあまり技量が求められなくなっている。信号を見落としたり速度超過したら保安装置が働いて自動的に修正をかけてくれます。さらに都市部を走っているような最新型の車両では、混雑率や天候などを計算して力行(アクセル)・ブレーキの強さを勝手に調整してくれるものもある。それでは運転士はただのオペレーターと変わりません。そんな環境で運転をしていたら、『少しのミスで大事故に繋がるかもしれない』という緊張感が薄れるのも当然です。これは運転士にかぎらず、鉄道の現場全体で起きていることだと思います」  かつては運転士をはじめとする現場の鉄道員たちの技量によって守られていた鉄道の安全が、技術の進歩によってかなり自動化が進んでいる。それがかえって職員たちの安全意識を薄くすることにつながっているというのだ。 「全体的に安全意識が薄れているのは間違いない。少子化、人口減少時代の中で鉄道事業者は経営の軸足を鉄道事業から関連事業へと移しています。もちろん鉄道事業で大事故を起こせば会社の存続に関わる事態にもなりかねないですし、会社の顔でもあるので手を抜くことはないでしょう。でも、優秀な人材は関連事業に優先的に配属されがちなのも事実です」(鉄道専門誌記者)
次のページ
不足する「中核となる人材」
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会