オーバーランに速度超過。頻発する軽微な鉄道トラブル、その背景は?

運転士の技量低下を指摘する声も

 増える微細な鉄道トラブルだが、その背景に「運転士をはじめとする関係者の技量が下がっているのも一因では?」と指摘するのは元運転士の男性だ。 「最近は技術が進歩したおかげで、運転士にはあまり技量が求められなくなっている。信号を見落としたり速度超過したら保安装置が働いて自動的に修正をかけてくれます。さらに都市部を走っているような最新型の車両では、混雑率や天候などを計算して力行(アクセル)・ブレーキの強さを勝手に調整してくれるものもある。それでは運転士はただのオペレーターと変わりません。そんな環境で運転をしていたら、『少しのミスで大事故に繋がるかもしれない』という緊張感が薄れるのも当然です。これは運転士にかぎらず、鉄道の現場全体で起きていることだと思います」  かつては運転士をはじめとする現場の鉄道員たちの技量によって守られていた鉄道の安全が、技術の進歩によってかなり自動化が進んでいる。それがかえって職員たちの安全意識を薄くすることにつながっているというのだ。 「全体的に安全意識が薄れているのは間違いない。少子化、人口減少時代の中で鉄道事業者は経営の軸足を鉄道事業から関連事業へと移しています。もちろん鉄道事業で大事故を起こせば会社の存続に関わる事態にもなりかねないですし、会社の顔でもあるので手を抜くことはないでしょう。でも、優秀な人材は関連事業に優先的に配属されがちなのも事実です」(鉄道専門誌記者)
次のページ 
不足する「中核となる人材」
1
2
3
4