また、国鉄末期には採用を控えていたこともあり、現場には中核となるべき40代の職員が非常に少ないのも問題とされている。
「鉄道の現場は、運転士も車掌も含めて“師匠から弟子へ”技術を伝えていく独特の風土があります。それが国鉄末期の職員採用ゼロによって途絶えている部分がある。JR北海道の不祥事にもこうした事情が背景にあると言われていますが、それはJR全社に共通する問題です。今、入社数年と思しき若い社員が運転士などを務めている姿をよく目にしますが、彼らに技量を教えるベテランも少ない。つまり、技術の継承が正しくなされていないし、『絶対に事故を起こさない』『軽微なトラブルも起こさない』という鉄道員のプライドも継承されなくなっているのではないでしょうか」(前出の記者)
いかなる事情があっても利用者が安心して乗ることができる鉄道であることは、公共交通機関であるかぎり最低限の条件だ。職員のアンバランスさや技術面の進歩などの理由はあれど、安全意識が希薄になることはあってはならない。いかなる関連事業も“鉄道の安全・安定”あってこそということを、鉄道事業者各社は再認識すべきだろう。
<取材・文/境正雄>