電力会社を替えても、それほどお得感がない。それでは、どうして電力市場の自由化をしたのか? 再び元キャリア官僚の宇佐美氏に解説をお願いした。
「今回の電力市場の自由化というのは、完全自由化に向けての第一歩にすぎません。次のステップ、ガス市場の自由化のある来年からはより本格的な競争が起こります。そして2020年頃をめどに、完全な自由化を行おうというのが政府の方針です。例えば、原油が上がったら即座に電力料金も上がるという仕組みになるかもしれません。これまでは電力会社が勝手に料金を上げられないように政府が見張ってきましたが、自由化はその規制がなくなるのです」
自由化すれば、電力が安くなるというのも誤解だ。世界に目を向ければ、電力自由化で先行した国では、ほぼ例外なく値上げされているからだ。
「ですから、今は完全自由化後に損をしないために、電力リテラシーを高めるためのトレーニングをすべき期間なんです。ある意味、利用者が政府に守られている今のうちに、電気料金の仕組みを見る目を養う良い機会にすべきです」
だが、漠然と各電力会社の動向を見ていても、見る目を養えそうにもない。トレーニングという意味も含めて、損しない範囲内で電力会社を切り替えてみたい。この観点から、宇佐美氏に改めて注目すべき電力会社を聞いた。
「結局のところ、安さを優先するのなら、原発が稼働した後の東京電力が一番安くなる可能性が高いです。既に高圧部門では再稼働を見据えた価格設定にしつつある。そんな中、例えば反原発という考えを持っている人であれば、東京ガスに切り替えるのもアリですよね。もしくはLooopなど、再生エネルギーを含んだFit電力を提供している新電力という選択肢もあるでしょう。どれくらいが石油や石炭の化石燃料で発電されているか、または再生可能エネルギー由来の電力なのか、その構成比は各事業者が発表しています。最初はとっつきにくいでしょうから、『電力エネニュー』など電力会社の比較サイトなどを参考にするといいですよ」
自分のライフスタイルに最適な、損をしない電力会社を見つけるのが早道。そうすることが、来るべき本格的な電力市場自由化に向けての備えとなるのだ。