希望か、それともペテンか!? イーロン・マスクの「ロケット再使用でコスト100分の1」を斬る

イーロン・マスクが考える「コスト100分の1」の根拠

スペースXのイーロン・マスクCEOとファルコン9ロケット Photo by SpaceX

 では、イーロン・マスク氏はどのように、再使用によって打ち上げコストを100分の1に減らせると考えているのだろうか。  マスク氏が過去に語ったところによれば、まずロケットのコストのうち、推進剤のコストが占める割合はわずか0.4%、また材料のコストも、多く見積もっても2.0%ほどしかないという。  つまりロケットのコストのほとんどは、ロケットを建造するための行為――材料を買ったり、加工したり、組み立てたりなど――から発生しているということになる。再使用すればこれをなくすことができ、ロケットのコストは大きく下がる、というのである。もちろん、再使用では点検や整備にかかる費用が新たに追加されるが、そうした手間は、建造するのにかかる手間と比べると圧倒的に少ないため、大幅なコストダウンは十分に可能だという。  また、スペース・シャトルが再使用に失敗した理由については「スペース・シャトルは不運だった。もともとのコンセプトは良かったと思うが、要求の変化によって、効率的に再利用することができない機体になってしまった」と分析。そして自身のロケットについては「私たちが考えている要求事項を固持し続けることができれば、迅速に再打ち上げができる『完全再使用ロケット』は開発できると考えている」と語り、スペース・シャトルと同じ轍は踏まないことを強くアピールしている。  実際、スペース・シャトルとファルコン9には大きな違いがいくつもある。たとえば、スペースシャトルは地球周回軌道から帰ってくるが、ファルコン9は高度60~80kmから第1段機体が帰ってくるだけで、減速に必要なエネルギーは少なく済み、また大気圏再突入時に受ける加熱もずっと小さい。またスペース・シャトルのブースターは大西洋に着水させて船で回収し、洗浄や整備を行い、推進剤を再度詰めて再使用されていたが、ファルコン9の第1段機体は陸上の発射台の近く、もしくは船に降ろすため、輸送や整備はずっと簡単になる。  つまりマスク氏は、スペース・シャトルよりシンプルで、かつ効率的に再使用できるロケットであれば、十分に勝機はあると見ているのである。  マスク氏はこうも語る。「私も3年前(2010年)までは、再使用ロケットには疑いの目を向けていました。しかし今、私はそれが可能であることを確信しています。もちろん、まだまだ先の長い話ではありますが」。そして現在まで、その見通しは撤回されていない。
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「コスト100分の1」はセールス・トーク
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