私立中高一貫校の優位アピールに使われる「検定外教科書」
検定外教科書を褒め称えて、高度な内容や高校課程を中学時代に終わらせるという先取りのメリットばかりがうたわれるというのは優秀な一部のサンプルを代表として語らられる私立中学VSダメな公立学校という議論の構造と、相似形ではないだろうか。
私見ではあるが、一部エリート校ならばともかく、そうでもない私立でいたずらに難しい教科書を使用するのは、私学がブランディングとして行っているように思えてならない。「うちは、普通の教科書などは使いませんよ。学習指導要領にとらわれない高度な教育を施しますよ」という訳だ。
もちろん、学校や生徒のレベル、運用方法によっては検定外教科書が有効に機能する場面もあるだろう。しかしA校の例を見ても、B校の例をみても、多数の生徒が学校のブランドイメージのために犠牲になっている学校も少なからずあるのだ。
繰り返すが、標準的には高校までの6年間で消化するとされている英単語数を中学2年までに消化するというのは、相当な荒技だ。さらに他の科目も大幅に先取りとなると負担は幾何級数的に大きくなる。少なくとも中学時代の筆者なら、根をあげていただろう。
一部の私立学校を見ていると、旧日本軍の失敗としてよく語られる、末端兵の体力をまるで無視した精神主義的な作戦のような教科指導が行なわれているように見える。そのいくつく先は、屍の山ではないだろうか。
<文/江藤貴紀(
エコーニュースR)>
【江藤貴紀】
情報公開制度を用いたコンサルティング会社「アメリカン・インフォメーション・コンサルティング・ジャパン」代表。東京大学法学部および東大法科大学院卒業後、「100年後に残す価値のある情報の記録と発信源」を掲げてニュースサイト「エコーニュース」を立ち上げる。