兵庫県朝来市に農業で移住した後、現在は同県で林業に関わる広尾さん(仮名・30代)は林業と農業のスタンスの違いをこう分析していた。
「両方を体験した私の感覚でいえば、農業はガチガチに固められた思考が浸透していて、その点がネックでした。一方、林業には比較的柔軟性があるというのが所感ですね。私は小売業からの転職組で、数字や流通には強いんです。農業で自分の培った経験を活かし、作った農作物を売り込もうとしても、なかなか取り合ってくれなかった。林業の場合は、流通改善やネットを使いPRをしたいというこちらの意見に関して、むしろ歓迎してくれたという現実がありました。収入面では大差ないですが、休みや自分の時間は増えたのも大きい。やりがいも違うので、どちらが良いというわけではありませんが、林業のほうが総合的な自由度は高いと思います。その辺りも若い人が増えている要因ではないでしょうか」
国税庁の調査(平成25年分)で見ると、30代の林業者の平均収入は約300万円と充分な数字とは言い難い。しかし、専業農家の年収が200万に届かない現実を考慮すれば、決して低い水準ではないだろう。むしろ農業ほど国から手厚い保護を受けていないことを加味すれば、伸び代は残しているといえる。そういった状況がうまく伝わっていないのは、ひとえに訴求力やアプローチの仕方に寄る所が大きいように感じる。