それでは、何故武道必修化の費用は誰にも知られていないのでしょうか。それは簡単なことで、文部科学省が総額を公表していないからです。文科省は、毎年9月にホームページ上で概算要求資料を公開しているのみです。そこには当年度予算と、次年度予算として財務省に要求する概算要求額が記載されていますので、単年ベースでは文科省予算は把握できます。さらにスポーツ関連予算の内訳として、武道関連費(武道場整備費など)の明細金額が確認できます。しかし将来を見越した累計の費用は全く公表されていません。
さらには文科省は武道必修化について国民にきちんと情報提供しようという考えは希薄なようです。一方的に断片的な情報を伝えるのみで、質問や取材に誠意をもって答えようという意志が感じられません。
例えば、民主党政権時代に当時野党だった自民党の馳浩衆院議員(現・文科相)が中学校武道必修化について2度も質問主意書を提出していますが、民主党は答弁書の回答をはぐらかしています。基本的な認識を問う質問には答えているものの、状況や対応を問う質問には「把握していない」「承知していない」「学校の設置者が判断すべきこと」とほとんど答えになっていません。
それでは与党と野党が入れ替わった現在、民進党が質問主意書を提出したら、馳浩文科相はきちんと答えるでしょうか?それも望み薄です。与野党が入れ替わろうと実際に答弁書を書くのは同じ文科省の役人なのですから……。
こんなこともありました。武道専門誌が武道必修化を特集した際に文科省を取材した時も、表層的な話しか答えず、何度かのやり取りの後、「一商業誌に特別な対応はできない」と取材を打ち切られた(月刊秘伝 2011年9月号)という話が伝わってきています。