先端企業は気付いている、「何もしない時間」の重要性

 では、私たちはどうすれば心の底から休めるのだろうか。イタリアのファッションデザイナー、ブルネロ・クチネリはこう語る。
<何気ない雨の日曜日。私は暖炉の前で、お気に入りの服を着て、時折うたた寝しながら、揺れ動く炎をただ眺めることがあります。すると魂の声が聞こえてきて、 さまざまな思考が巡ってくる。妻は“退屈じゃないの?”と訝しみますが、とんでもない(笑)。それは私にとってインスピレーションの源であり、静寂と平穏をもたらすラグジュアリーな時間>(ブルネロ クチネリ 2016 春夏 ラグジュアリーの本質 冊子より)
 もちろん、暖炉やお気に入りの服はなくてもいい。“何もしない状態”を確保することが重要なのだ。  かつてビーチボーイズのソングライター、ブライアン・ウィルソンは「Busy Doin’ Nothin’」(ヒマで忙しい)という名曲を書いた。冗談のような話だが、何もしていないときにこそ、心は活力を取り戻す。  しかしそのための時間まで、他の誰かが用意してくれるわけではない。モノや情報に包囲された時代に屈することなく、何もしないための積極的な怠惰が求められているのである。 <文/石黒隆之 photo by Stephanie White (CC0 1.0)
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