KSLV-IIロケットに使用される推力75トン級大型ロケット・エンジンの燃焼試験の様子 Photo by KARI
KSLV-IIが完成すれば、韓国にとっては月探査が実行できるだけでなく、自力で人工衛星を打ち上げられる手段を確保するという、悲願の達成にもなる。韓国は衛星の開発能力はあるものの、羅老号以降、韓国は自力で衛星を打ち上げる手段をもっていないため、他国による打ち上げに頼っている。しかし自力で打ち上げられるようになれば、韓国の宇宙開発は初めて自立に向けて足を踏み出すことができる。
また、近年は電子機器の小型化、高性能化などのおかげで、小さな衛星でも十分な能力をもたせることができるようになったことから、小型の人工衛星が流行しはじめており、世界各地、たとえば発展途上国や一民間企業などの、これまで衛星と縁もゆかりもなかった層にまで、衛星利用の機運が高まっている。
KSLV-IIはこうした小型衛星の打ち上げに適していることから、韓国が人工衛星の商業打ち上げ市場に参入することも不可能ではない。
さらに、KSLV-IIの技術は、より大型のロケットに発展できる余地もあり、小型衛星から大型衛星まであらゆる衛星を打ち上げられるようになる可能性もある。韓国は立地的に南方向以外への打ち上げができないため、あらゆる軌道に向けて打ち上げるためには、他国や洋上に新たに発射場を確保する必要はあるものの、そこさえクリアすれば、韓国は宇宙開発で完全に自立することもできよう。
次回はこのロケットに搭載される予定の月探査機と、そしてロケットと月探査機をとりまく問題について取り上げたい。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。
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http://kosmograd.info/about/
【参考】
・한국항공우주연구원 – 한국형발사체 75톤급 엔진 30초 연소시험 현장 우리나라 독자 발사체 개발의 핵심이라 할 수…(
https://www.facebook.com/karipr/videos/973332502774665/)
・South Korean space developments(
http://forum.nasaspaceflight.com/index.php?topic=38220.0;all)
・韓国の宇宙開発:宇宙政策シンクタンク_宙の会(
http://www.soranokai.jp/pages/korea_space2011.html)
・第5回調査分析部会 韓国の宇宙政策の概要 2013年8月9日 宇宙航空研究開発機構 調査国際部(
http://www8.cao.go.jp/space/comittee/tyousa-dai5/siryou1.pdf)
・[社説]羅老号の成功、これからは韓国型ロケットだ:東亜日報(
http://japanese.donga.com/List/3/all/27/420330/1)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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