「発信する」だけではなく、「受信する」重要性への気づき
ここからがビジネス研修たるDIDの総仕上げ。レインボーで学んだことを話し合うのだが、これも暗闇ルームでおこなう。
慣れない環境だっただけに、「もっと○○したかった」、「ここに気をつけるべきだった」などと反省点が先に立つ。しかし、ネガティブな空気ではない。こうした反省を素直に口にできるのは、特殊な環境であればこそだろう。
暗闇ルームを後にしてからも、再度、学びをまとめる時間がとられる。今度はミーティングではなく、個人の時間だ。各人、気づきを書き出し、お互いに発表する。
ここで「暗闇研修であればこそ」の学びに気付かされることになった。
なにしろ、全員から提出されたのが、「他メンバーの進捗・理解度を確認する」だったのだ。曰く、己が発信するだけでなく、他人の状況を聞き出し、理解すべきということだ。
大した気づきではないだろうか? しかし、これが全員から提出されたというのは興味深い。
時間制限のある作業では、どうしても先へ先へと急ぎ足になってしまう。そんな状況下でも、チームプロジェクトの完成度を高めるために必要なものとは? 誰もが感じたのだろう。
アテンドのジュンさんからも指摘があった。
「模型の大きさを確認する過程で、『えっ?』などととまどいの声を発している人もいたんです。でも、それに気づく人がいなくて、置いてけぼりになっていましたね」
またリーダーとフォロワーの関係にも言及する。
「リーダーになった人は、プロジェクトを引っ張るのが大変な役割だと考えるものです。確かにその通りなのですが、進行スピードはリーダーや一部の牽引役の人たちのペースになりがち。フォロワーの立場からすると、そのペースに合わせていくのも大変なのだということは覚えておいてほしいです」
仕事の場では「ヘルプ!」と声を上げることははばかられる。しかし、チームプロジェクトでは声を上げた方が、かえって進行がスムーズになるのかもしれない。
これを実感として共有できているチームは、長期プロジェクトでも強いだろうな、としみじみと思わされた。
※今回は割愛したが、組み立てミッション終了後、暗闇での食事タイムがある。これがまた率直に言って楽しい! おにぎりを食べていても、「これ何の具?」と首を傾げる。味覚でさえも、視覚に頼っていることを痛感させられる。DIDがエンタテインメントイベントとして成り立っているのもよくわかる。
※※※個人的な感想※※※
研修を終えて、会場を後にする。その道中で、自分の行動について振り返る。
うまく振る舞えたか? ほかのメンバーを助けてあげられたか? やはり反省点が先に立つ。しかし、自分の置かれたポジションや成果とは無関係に、自己肯定感が生まれたのは不思議なところ。
おそらく、その肯定感の源泉はシンプルだ。他者と積極的に関わろうとしたこと、他者の役に立ちたいと思えたこと、そして何より、メンバー(今となっては仲間という言葉のほうが近い)がポジティブに接してくれたこと。どれも人間関係が基底にある。たぶん、これは仕事に限らない。
志村代表の言う「勝ち負けとは別次元のコミュニケーション」とは、こうしたことではないか? 今でも思いを巡らせている。
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<取材・文/江沢 洋 撮影/山川修一(本誌)>