一方で、震源地に近い商店街の被害はさらに深刻だった。
熊本市東区、市内電車の終点である健軍町電停前にある「ピアクレス健軍商店街」。
最も被害が大きかった益城町にも近いこの商店街では、5月に入っても営業を再開できていない商店が目立つ。
ピアクレス健軍の入口。東区の中心商店街だ(熊本市東区)
そして、商店街を中ほどまで進むと、驚きの光景が広がっていた。商店街の核店舗である3階建ての総合スーパー「マルショク・サンリブ健軍」が全壊していたのだ。2014年にリニューアルしたばかりのアーケードもサンリブの建物に押し倒されており、商店街の中ほどは5月現在も封鎖中。近隣の商店街コミュニティ施設、大手ドラッグストアなども営業できない状態となっている。
近くの住民は「何かが爆発したかと思った。深夜だから良かったが、営業中だったら…」と震える。
実は、サンリブ健軍の倒壊した部分は1973年に熊本市中心部で火災を起こして多くの死傷者を出した「大洋デパート」の健軍支店の建物を活用したもの。築50年近いために老朽化が進行していたという。
マルショク・サンリブ健軍(熊本市東区)。倒壊したのは古い建物を再活用した部分のみだった
健軍商店街の南側の商店はサンリブの集客に依存していた部分も大きく、また、サンリブの倒壊により商店街が通り抜けできなくなっているため人通りが非常に少ない状態となっている。
サンリブ健軍を運営するマルショク(大分市)では、準備が整い次第仮設店舗を作るなどして営業を再開したい考えだと言うが、解体には時間がかかるうえ、東北など他地域の災害復興もあり、資材の高騰は避けられないために新店舗の着工予定は未定。
サンリブのそばにある商店の店員は「もうすぐ商店街が通れるようになるのでもう少しの辛抱です」と話すが、アーケードの修復などもサンリブを解体しないと行うことができず、本格的な復興までには時間がかかりそうだ。
誰も通らない商店街にはJリーグ「ロアッソ熊本」の応援旗が空しくはためいていた。
健軍商店街。復興には時間がかかりそうだ(熊本市東区)
<取材・文・写真/都市商業研究所>
【都市商業研究所】
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