そして緊急来日したフランス人達は念を押すように、フォーラムの最後に再度、このように強調した。
「Airbnbのイメージ戦略とその実情は全く違う。匿名性を徹底的に潰して下さい。すでにフランス全土に拡がり、取り返しがつかないほどAirbnbにやられてしまったフランスとパリの現状をよく見て下さい。日本はまだ今なら間に合う、フランスと同じ轍は踏まないで下さい。良識ある日本の皆様のご検討をお祈りしております」
どんなに素晴らしいルールが施行されても、それを監督する取り締まりとの両輪が揃わなければ、フランスの轍を踏むことにもなりかねない。既に中国系民泊サイト大手2社の日本における保有ベッド数は、Airbnbの日本でのベッド供給数に迫る勢いだ。現在、全国的な民泊解禁に向けてのルール作りが急ピッチで進められおり6月にはその要綱が明らかになるが、現状で聞き漏れてくる情報を繋ぎ合わせると、民泊は旅館業法上の簡易宿泊所に統合され、自宅を使う民泊とビジネスとして展開する民泊とは分けて考えられている。これは日本の現状に合ったスマートな選択肢かもしれない。その際、Airbnbを始めとする民泊マッチングサイトと新規派生ビジネス、委託関連ビジネスに対しても、何が合法で何が違法かを徹底周知させなければならないだろう。
そして民泊の影響は、宿泊施設が足りないと言われる東京や大阪、そして京都でも既に色濃く出ている。筆者が独自に行った宿泊施設への聞き取り調査でも、東京や京都などは繁忙期のピーク時こそ宿が取りにくいものの、年間で見れば5%~10%弱の客室稼働が落ちている。いまだ宿泊施設不足が懸念される大阪でも昨年ほどの状況ではなくなっている。全国的な民泊解禁は、大都市と地方都市や誰もが知るような有名観光地ではなく、地元の景観や旅情を保ちながら細々と展開しているような観光地の、地域経済ごと破壊する可能性も秘めている。そうした零細観光地への配慮が、ルール作りに反映されることを期待したい。
<取材・文・写真/向井通浩>
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ジャパン・バックパッカーズ・リンク」代表、ジャーナリスト。インバウンドとその周辺事情に精通している。