例のような質問に明確に答えられない学生さんの場合、そもそもこの話が作り話なのでそれが露呈してしまうのが怖くて「恐怖」の微表情が生じた可能性が考えられます。もしくはウソの話ではないにせよ、自分の本当の感情である「恐怖」を「怒り」と取り違えてしまっている、つまり自己に対する理解・認識が不足している可能性もあります。他にも微表情が生じる理由は色々あり得ます。深堀りの質問を進めていくことでその理由を明らかにしていくことができます。
さて、ここまで読まれてきて「微表情を見抜くことはそもそも難しすぎるのではない?」と感じられる方もいらっしゃると思います。確かに全ての微表情を適確に見抜くには、相当の専門トレーニングが必要です。しかし、専門トレーニングを受けなくても、微表情に対するアンテナを高めることは可能です。まずは人の表情に表れる違和感を感じとれるようにしましょう。それには人の表情をよく観て話をするようにしなくてはいけません(私たちは驚くほど、人の顔を見ずに会話をしています)。
そして、顔のあるパーツだけ、例えば、眉だけに意識を向け、今、どう動いたかな?と観察しながら、会話をしてみて下さい。そして違和感を感じたら、「何?」「どうした?」「何かあるはず」と考え、「大丈夫?」「何か質問ありそうな顔しているけど、質問ある?」などと言い、会話の相手にそれとなく質問してみて下さい。少しずつ、微表情に対するアンテナが高まってくるでしょう。
微表情を採用で活かす方法、いかがでしたでしょうか。少しでも面接官が学生さんをよりよく知るヒントになれば幸いです。企業と応募者とのミスマッチが少しでもなくなりますように。
※実話を基に構成していますが、個人や企業名が特定されないように話を変更・脚色しています。
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<文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でコミュニケーション学を学ぶ。学際情報学修士。 日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Cording System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、日本ではまだ浸透していない微表情・表情の魅力、実用例を広めるべく企業コンサルタント、微表情商品開発、セミナー等の活動をしている。