死刑囚がつくったアート。その創作の源泉とは? ギャラリーオーナーに聞いた

如何に色眼鏡で見ているかがわかる

――「死刑囚の書いた絵」と聞いて、自分は最初「仏画」のようなものを想像していました。ところがHPで「極限芸術2」の作品を見たところ、意外に抽象画のような内省的な絵が多かった。そして実際に展示を見に来てみたら、お寿司の絵や、エッチな絵や、四コマギャグ漫画があったりと、こちらのイメージがことごとく覆されています。考えてみれば当然なんですが、「死刑囚の絵」だから何か特別なパターンがある訳ではなく、作家さんによって作風はそれぞれバラバラなんですね。  それはやっぱり、僕らが如何に色眼鏡で物事を見ているか、ということの証明であると思うんですよ。死刑囚は懲役刑と違って「死ぬことが刑」なので、基本的に更生の余地すら与えられていないんです。死刑囚の方たちが絵を描く理由もそこにあって、その中でいつ来るかわからない死刑執行の日までの時間を過ごすために、絵を描いたり詩を書いたりしているんです。だから、本来は別にどんな絵を描いたって構わないはずなんですが、どうしても世間一般では「死刑囚なんだから反省している絵を描かなければいけない」と思われていて、それは変な話なんですよね。

「自在菩薩」(若林一行・岩手県洋野町母娘強盗殺人事件)

芸術文化プログラムには奨励されない

――最後に、「極限芸術2」を始めとした、「クシノテラス」の今後の展望を教えてください。

タイトルなし(加藤智大・秋葉原無差別殺傷事件)

 今回は別団体からも「是非この作品を展示して欲しい」と作品を提供していただけました。夏に向けて、都築響一さんや茂木健一郎さんに来ていただいて、トークイベントも開催する予定です。東京オリンピックパラリンピックに向けて、どうしてもこういったアウトサイダーアートは芸術文化プログラムには奨励されない傾向にあるので、今後もクシノテラスでは継続的に本来の意味での「アウトサイダーアート」を打ち出していきたいですね。

「死刑」(和歌山毒物カレー事件・林眞須美)

<取材・文/カルロス矢吹> <都築響一トークイベント> お申し込み・詳細は→https://goo.gl/WzW4FI 5月29日(日)18:30~20:30 クシノテラスオフィス(広島県福山市花園町 ギャラリーの上です) 参加費2,500円(1ドリンク付き) <茂木健一郎トークイベント> 7月4日(月)18:30~20:30 お申し込み・詳細は→https://goo.gl/cXlwIw クシノテラスオフィス(広島県福山市花園町 ギャラリーの上です) 参加費2,500円(1ドリンク付き) 『極限芸術2~死刑囚は描く~』 開催中~8月29日(月)まで 12:00~18:00 開館/土・日・祝・月 6/11・6/25・6/26は休館 観覧/500円 ※小学生以下、障害のある人は無料 会場/クシノテラス(福山市花園町2-5-20) 【櫛野展正】 広島県在住。2000年より知的障害者福祉施設職員として働きながら、広島県福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」 でキュレーターを担当。2016年4月よりアウトサイダーアート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当て、全国各地の取材を続けている。
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