2020年に「宇宙ホテル」が実現? 空気で膨らむ宇宙ステーションが打ち上げへ
休日は宇宙ホテルでリフレッシュ――。そんなSF映画でしか見られなかった時代が、ついにやってくるかもしれない。
米国のビゲロウ・エアロスペースという会社は4月11日、2020年ごろを目処に、宇宙旅行者が滞在できる商業用の宇宙ステーション「B330」を打ち上げると発表した。宇宙ステーションというと、これまでは世界各国から選ばれた宇宙飛行士しか滞在できなかったが、商業用と銘打たれていることからわかる通り、お金さえ払えば誰でも滞在できる施設になる予定で、実現すれば世界初となる「宇宙ホテル」が誕生することになる。
同社ではまた、並行して国際宇宙ステーションを使い、この宇宙ホテルの実現に必要な技術の試験を行おうとしている。この試験、そして2020年のB330のあとには、より大型の宇宙ホテルを打ち上げ、さらに利用拡大を狙う構想もある。
果たして、「2020年宇宙の旅」は実現するのだろうか。
ビゲロウ・エアロスペースは、ホテル王としても知られるロバート・ビゲロウ氏によって1999年設立された会社で、宇宙ホテルの建造を目指している。
同社の宇宙ホテルの最大の特長は、風船やゴムボートのような空気で膨らむ構造をしているところにある。
国際宇宙ステーションなど、これまでに打ち上げられた宇宙ステーションの部屋は、すべて金属で造られており、まず地上で部屋の形として完成させ、それをロケットで宇宙まで打ち上げる。しかし、この場合、そのロケットに搭載できる限界が、そのまま居住区の広さの限界になる。実際、国際宇宙ステーションではそうした小さな部屋をいくつも結合することで、それなりに広い空間をつくりだしているが、中には実験装置や生活物資などが満載されており、個人用の部屋は電話ボックスほどの広さしかない。
そこで風船のような構造にすれば、ロケットで打ち上げる際には空気を抜いて萎ませておき、宇宙で空気を入れて膨らませるようなるため、ロケットに搭載できるサイズ限界を大きく超える、広い空間をもつ部屋が実現できる。
こう聞くと、壁が破れたりしないのかという心配が出てくるが、もちろんそこは対策済みで、防弾チョッキや消防士の防火服などにも使われる、強靭かつ耐火性にも優れた素材を何層にも重ねて造られている。ビゲロウ・エアロスペースではこれまでに2機の無人機を打ち上げて試験しており、その結果、耐久性は従来の金属製よりも強いというデータが出ているという。
この技術は、1990年代に米国航空宇宙局(NASA)が国際宇宙ステーションに設置する新しい居住区のために開発していたものが原点となっている。このNASAの計画は資金難で中止となるが、ビゲロウ・エアロスペースがその技術を買い取り、改良や試験を重ねてきた。そしてついに実際に打ち上げ、人が中に滞在できる段階がやってきたのである。
空気で膨らむ宇宙ステーション
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