昨年10月23日付『
The Independent』では、反主流派のある王子が語ったこととして、〈建国者の息子12人の内の8人と聖職者そしてサウード家の多くはサルマン国王を退任させることを望んでいる〉また〈75%の聖職者は現国王の弟のアーメッド・ビン・アブドゥラズィーズを支持している〉と報じた。これまでサウード家の内部の対立が表面化することはなかった。サウード家の内部でサルマン国王と彼の息子の国防大臣の政権に相当に不満が欝積しているようだ。特にそれが、厳しい財政危機と重なってより深刻化している。
中東はこれからイランの勢力が増大する。それに対抗するスンニ派の盟主サウジは武力強化が更に必要になる。イランからの支援が更に強まるイエメンとの紛争も解決の糸口は見えない。これからも当面サウジの経済は原油の輸出に依存し続けねばならない。しかし、サウード家が一丸となって経済改革ができる体制になれる様相はないと思われる。「ビジョン2030」の推進も内部抗争の中で埋もれてしまう可能性が充分にある。サウジには非常に厳しい将来が待っているということだ。
<文/白石和幸 photo by
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しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身