財政に窮するサウジ。サルマン国王の政治体制も黄信号が

「ビジョン2030」実現を阻む障壁

 しかし、問題は果たして「ビジョン2030」が遂行できるのかという点である。これまでサウジでは1970年代から国内産業の発展の必要性が謳われていた。しかし、ベネズエラと同様に、これまで原油の輸出だけに依存した経済が続いている。昨年から原油の大幅な下落によって歳入が大きく後退して国内経済が厳しくなって初めて切実に改革の必要性を感じたようである。しかし、厳しい経済事情の中で先行投資という意味で安価に手に入る物資の輸入をやめてコスト的に高くついても国内で生産するだけのメンタルを彼らが備えているか疑問である。  そして更に問題は、サウード家内部で内紛が生じていることが表面化していることである。これはかつてなかった現象である。1万人以上いるとされているサウード家の内部でサルマン国王を解任させようとする動きがあるのだ。サウジの建国者アブドゥル・アズイーズの孫のひとりが昨年9月に『the guardian』で、サルマン国王の治政を疑問視する動きがあることを語ったことが報じられた。  その前には、ツイッターでサルマン国王と息子のサルマン国防大臣を批判しているのが筆者匿名による条件でメディアで明るみになったこともある。また〈サルマン国王は血管性認知症を患っている〉という話もあるのだ。その為に、実際の政治は息子のサルマン国防大臣が担っているとされている。しかし、同氏には人望がないという。独断的で、長引いているイエメンへの武力介入を決めたのも同氏だという。昨年の巡礼地メッカで巡礼者が折り重なって圧死。その数は凡そ2000人。この事件が起きたのは王位継承者1番のムハマンド・ビン・ナイフ内務大臣とサルマン国防大臣の権力争いが警備の不備を生んだとされている。
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サウード家内部に募るサルマン国王への不満
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