財政に窮するサウジ。サルマン国王の政治体制も黄信号が

 サウジの労働人口1120万人の30%は外国からの移民で、彼らが職場の80%を占めているという。サウジ国民の多くは公務員や事業経営に携わっている。一般の職場での就業は僅かである。しかも多くのサウジの若者には職場がない。例えば、〈タクシーの運転手をサウジ国民だけに割り当てる策を促進したが10年経過しても、その成果は見られなかった〉という。サウジ国民にとって地位の低い職に就くことへの抵抗や移民者を対象としたレベルの給与を受け入れることができないのである。  そして、人口2700万人で〈24才未満の若者は移民を含め46.18%を占めている〉という。産業が発達していれば若者の雇用も解決されているであろう。しかし、サウジの産業と言えば原油の採油に関連した企業が大半である。ちなみに、中東のライバルのイランの人口は8200万人。国の発展には人口が大いに左右する。その意味で中東の両雄の将来の発展性という意味ではイランが有利であるのは明白である。 (参照「Expansion」)

起死回生の策、「ビジョン2030」とは

 サルマン国王の3番目の王妃との間に出来た息子で王位継承権2番目で国防大臣を勤めるムハマンド・ビン・サルマン王子がリーダーになって推進した「ビジョン2030」が目指すものは4年先の2020年には歳入において原油に依存しない財政体制をつくりあげること。そして、2030年には国内で工業、鉱業、観光業などを発展させて若者の雇用を増やすというものである。 「ビジョン2030」のプラニングに参加したマッキンゼー・アンド・カンパニーが昨年12月に公表した分析によると、経済改革によって〈GDPを2倍に増やすことが可能となり、2030年までに600万の新しい雇用を生むことになる〉としている。このプランを推進するには〈4兆ドル(460兆円)の投資が必要〉とされている。そして、工業の発展という枠組の中で〈国内での軍需産業を育てる〉とある。よって、武器の購入においても〈国内の軍需産業の発展に繋がる供給業者と契約を交す〉と示唆している。  また、〈アラムコの株を2兆-2.5兆ドル(230-288兆円)に相当する5%の枠内で販売して、そこから政府ファウンドして2兆ドル(230兆円)を用意〉して国内産業の発展に充てるとしている。(参照「BBC」)  これから先15年のプランである。このプランが実現しない暁にはサウジの崩壊が間近に迫ることになる。何故なら、サウジの今後の原油の採油量と国内消費の増加から〈2030年にはサウジは原油の輸入国に転じる〉という予想が存在しているからだ。(参照「Petroleo&enargia」)
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「ビジョン2030」実現を阻む障壁
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