スティグリッツ教授は、消費税増税の引き上げを見送るよう提言
3月16日、政府は、世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」の第1回を開催。ノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授が招かれた。スティグリッツ教授は、「世界経済は、2016年はより弱くなるだろう」との見解を示したうえで、「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」と述べた。
スティグリッツ教授は、「消費税増税は総需要を喚起するものではないとの観点から、消費税引き上げではなく、炭素税や相続税、累進制の高い所得税などで増税し、一方で教育、経済を下支えする投資支出を拡大していくことで、経済を刺激する効果があると考える」と発言した。
(参照:
スティグリッツ氏発言要旨 消費税引き上げ「今のタイミングは適切ではない」 産経新聞)
クルーグマン教授も、消費税増税の引き上げを見送るよう提言
3月22日、政府は、「国際金融経済分析会合」の第3回を開催。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン・米ニューヨーク市立大教授が招かれた。クルーグマン教授は、来年4月の消費税増税に反対の意見を示した。
クルーグマン教授は、日本経済について「消費税の問題もある」と指摘し、日銀のマイナス金利は効果に限界があるため、財政出動の必要性を強調した。
また、政府の借金について、以下のような見解を示した。
“Third point I would make is that the concerns about the debt, I don’t want to wave away entirely but one thing we have learned from Japan but also from other advanced countries is that stable advanced nations that borrow in their own currencies have a very long road for them to have a fiscal crisis. You have your own currency. The worst that could happen would be that the yen would depreciate which would be a good thing from your point of view. I do not think that is a thing to be worried about. “
(私が指摘したい3つ目のポイントは、債務の懸念についてである。私はこれを完全に無視したいとは望まないが、我々が日本だけでなく他の先進国からも学んだことは、安定した先進国が自国通貨建で借入をしたならば、財政危機に至るまでには非常に長い道のりがある、ということである。日本は自国通貨建ての債務である。起こりうる最悪のことは、円の通貨下落であるが、それは日本の視点からは良いことである。私は、心配すべきことであるとは考えない)
(参照:
Paul Krugman: Meeting with Japanese officials, 22/3/16 [PDF])
4月18日、安倍晋三首相は衆院環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)特別委員会で、熊本地震を受けて来年4月に予定している消費税増税の先送りを求められ「リーマン・ショック級、大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていくという基本的な考え方に変わりはない」と従来の答弁を繰り返した。
日本のエコノミストも経団連も、予定通りの引き上げを支持している。
しかし、世論や著名な経済学者は延期を支持している。
果たして、消費増税はどうなるのか? 今後も目を離せない。
<文/丹羽唯一朗 photo by
Ken Teegardin on flickr (CC BY-SA 2.0) >