現在、サウジからエジプトに行くには、ヨルダンそしてイスラエルを経由して行かねばならない。橋が出来れば両国の人的そして商的交流もより発展するはずである。サウジのメッカに巡礼するのも容易となる。
また、現在のエジプトにとって、サウジは国の発展の為には重要なスポンサーになっている。4月のサルマン国王のエジプト訪問でも〈25人の王子と18人の閣僚を同行させての〉大掛かりな国王の訪問でエジプトのメディアの間では巨額の支援があるものと期待されていたという。案の定蓋を開けて見ると〈15億ユーロ(1700億円)の支援金の提供から始まって、投資基金として160億ドル(1兆8000億円)を用意し、この先5年間の200億ドル(2兆2800億円)分の石油の供給を保障し、これらを含めて17項目の合意が交された〉という。(参照「
La Vanguardia」、「
HispanTV」)
そして、サルマン国王のエジプト訪問でチラン島とサナフィール島のエジプトからサウジへの譲渡が発表されたのだ。この譲渡は、〈最近6年間に双方で11回の協議が重ねられての決定だ〉とエジプト政府は発表している。また、アルジャジーラによると、〈1950年にサウジは当時建国されたイスラエルに脅威を感じて、この2島をエジプトの保護下に置くことを同国に依頼した〉のだとエジプト政府が言明したという。
しかし、譲渡の背後には、シシ政権樹立後からずっと、サウジが資金面で支援し続けて来たことに対する「礼」という意味もあるように思える。なぜなら、国民や議会はこの譲渡に反対する声も少なくないのだ。(参照「
BBC」)
日本のメディアにとってはあまり目立たない地域であるが、このチラン海峡は地政学的に非常に重要な地域だ。この橋の建設計画の行方は、今後も注視していく必要がある。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身