紅海の橋建設計画が変える「イスラエル・サウジ・エジプト」3国のバランス

イスラエルにとって不都合な「橋」

 この建設計画に不快感を示したのがイスラエルだ。この橋の建設はイスラエルにとって紅海での自由な航行を妨げることに繋がり、アカバ湾にあるイスラエルの港の活動を制限することにも成り兼ねないと見ているという。  イスラエルが紅海に到達するには唯一アカバ湾にある港から出港してこの2つの島のあるチラン海峡を通過せねばならない。これはヨルダンにとっても同じ境遇にある。アカバ湾にはイスラエル、ヨルダン、エジプト、サウジの4か国が海に面して存在している。  そもそも、イスラエルは第三次中東戦争で当時のエジプトのナセル大統領がチラン海峡を封鎖したことを受けて、エジプトを攻撃してこの2つの島も奪った。そして、1982年のエジプトとの和平協定に至るまでイスラエルの統治下にあったのである。エジプトに返還したのも、チラン海峡の航海の自由をエジプトが保障したからである。現在、この地域はシナイ半島駐留多国籍軍の監視団が航行の自由を守っている。  そして和平協定以後のエジプトは、ムバラク大統領の政権の元で中東における米国の代理人的な役目を担い、イスラエルとも対イランを意識して協力関係にあった。
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3国のバランスを変える「橋」の存在
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